出版社内容情報
私たち視界には、いつもお墓があった。
裸になる快感を追い求める主婦。
「真理」がわからないと言う小学四年生四人。
夜コンビニに出ることだけが日課の引きこもり男性。
「真・神塾」という塾への合宿参加を決めたギャル。
潔癖症の妻を持つ中年。
皆それぞれに悩みを抱えつつ、しかし必死に生きていこうとしている面々だった。
彼らはなぜ「内藤家之墓」に引き寄せられてしまうのか。
最後に入る世界・お墓は私のためか誰かのためか。
芥川賞作家が描く悲喜交々の群像劇。
内容説明
「墓参り」のカタチは、十人十色。
著者等紹介
吉村萬壱[ヨシムラマンイチ]
1961年、愛媛県松山市生まれ、大阪育ち。京都教育大学卒業後、東京、大阪の高校、支援学校教諭を務めた後、五十二歳で専業作家に。2001年「クチュクチュバーン」で第九二回文學界新人賞を受賞してデビュー。2003年「ハリガネムシ」で第一二九回芥川賞、2016年『臣女』で第二二回島清恋愛文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケンイチミズバ
90
夕暮れ前、だれもいない霊園で全裸になる。解放感に満たされる女はひんやりした墓石に体を密着させ自慰行為に移る。気づくと人の気配とともに靴と服が無くなっている。家までおよそ2キロあるのに。このつかみがスゴイし、要所で爆笑を誘われ引き込まれた。おそらく女は抑圧を抱え、乳癌の傷跡と単身赴任の夫の存在が示唆される。全裸で夜の国道を疾走する女を見た引きこもりの男は幻覚でなかったことを確かめるためもう一度部屋を出ようと決意する。引きこもりも女に遭遇することで自分は正常に思える。そしてそれはもう一人の女にも思えたことだ。2024/05/22
Karl Heintz Schneider
41
恐らく三好愛さんであろう可愛いイラストにはふさわしくないシュールな内容だった。K市営共同墓地を訪れる人々の人間模様。そう思いながら、フムフムと読み始めたのだが、中盤からお墓とは関係ない意味不明な展開が続き、その後もずっと???の思いが消えないまま読了。中でも、とんでもない下品な女が何人も出てきて辟易した。(ここではちょっと書けないような)著者の吉村萬壱さんは初読みの作家さん。以前、芥川賞も取ったことがあるそうだ。でも、これって「文学」なんですか?伊坂さん。読解力がないせいかもしれないが私には合わなかった。2024/08/24
Tαkαo Sαito
32
吉村萬壱先生の作品は全部追っているが、今回も先生の変態さの通常運転ぶりが見られて満足。面白さ、読み応えで言ったら前作の「CF」の方が良いが、今回のような複数の関係がない人間それぞれの生臭さをおもしろおかしく読み易く書いてくれていて感謝。 今の社会では、自分も含めて皆どこかしらおかしい、壊れている部分を持っていると思うし、もはやそれがスタンダードになはずなのに、なおも誰かを吊し上げて、叩き続けえまた別のターゲットを探し続ける社会の気持ち悪さ、歪みにメッセージしているように感じた(考えすぎかもしれないが)2024/04/28
夜明けのランナー
28
もうこれ以上読み進めることは無理かもと一瞬思った。しかし、そこから早かった。ファンタジーではないことは確かだと思うけど、どうなんだろう。ただ読み終えてみると、不思議な時間が流れていたように思える。2024/11/25
そうたそ
18
★★☆☆☆ お墓を巡る悲喜交々の群像劇。全裸になったり、うんこをもらしたり、人によっては拒否感を抱くかもしれないが、その辺は著者の作品としては通常運転。"お墓"という部分にあまり意味合いを感じられないまま話が過ぎていった。面白くないことはないが、読み終わったあとに、結局何だったのかという呆気なさのみが残った。2024/04/19