出版社内容情報
江戸末期、命を賭して石見銀山で働く人々の懸命な姿を、いま注目の歴史小説家が活写する歴史群像。新直木賞作家の受賞第一作。
内容説明
江戸後期、弘化年間。金吾は石見国大森銀山にやって来た。大森代官・岩田鍬三郎の身辺を探るためだ。代官所の中間として働き始めた金吾だが、そこで待っていたのは銀山を支えるため懸命に生きる人々との出会い。命の危険にさらされながら間歩の中で鉱石を採掘する掘子、重い荷を運び母と妹を養う少年、世を憎み、酒浸りの日々を送る僧侶。そして彼らを慈悲深く見守る岩田…。さまざまな思いに触れ、金吾はいつしか彼らに魅せられていく。産み出された良質で大量の銀が世界経済を動かし、「銀鉱山の王国」と呼ばれた石見銀山。常に危険と隣り合わせで働く名もなき掘子たちの生きざまを活写した歴史群像。
著者等紹介
澤田瞳子[サワダトウコ]
1977年京都府生まれ。同志社大学文学部文化史学専攻卒業、同大学院博士前期課程修了。2011年、デビュー作『孤鷹の天』で第17回中山義秀文学賞を最年少受賞。13年『満つる月の如し 仏師・定朝』で本屋が選ぶ時代小説大賞2012ならびに第32回新田次郎文学賞受賞。16年『若冲』で第9回親鸞賞受賞。20年『駆け入りの寺』で第14回舟橋聖一文学賞受賞。21年『星落ちて、なお』で第165回直木賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
283
澤田 瞳子は、新作中心に読んでいる作家です。著者の直木賞受賞第一作、石見銀山で働く人々の物語でした。石見銀山は、豊臣政権の財源にて現世界遺産としては知っていますが、石見銀山が舞台の小説は、初読です。あまり大きな事件は起きませんが、石見銀山周辺の人々の機微が巧みに描かれています。金吾の成長譚でもありました。 GO TO TRAVELが復活したら、まだ訪れたことのない島根・鳥取を旅して、石見銀山を観てみたい。 https://www.tokuma.jp/news/n43524.html2021/10/18
いつでも母さん
183
江戸後期、石見銀山。代官・岩田の身辺を探るべくかつての上役より密かに任を受けた中間・金吾。金吾目線で銀山で働く人々の様子と町の賑わいが活き活きと描かれ、ひたすら領民の安寧の為と動く代官の真意が、徐々に金吾の胸に響くのが好ましい。親しくなった命を掛けて鉱石を採掘する堀子頭・与平次がまた好い漢でその思いが胸を打つのだ。そのカッコイイ漢たちの前に何とも卑しい小出が情けなく、金吾の成長譚でもあった。澤田さん、直木賞受賞第一作。満ち足りた読書時間だった。お薦めです。2021/10/24
パトラッシュ
178
鉱山から産出される銀は美しく輝いているが、採掘する労働者は鉱害で早世する運命にある。石見銀山を支配する代官の中間となった金吾は、江戸とは何もかも違う風土に戸惑いつつ明るく懸命に生きる男女の姿に接し次第に馴染んでいく。代官の失策を探る密命を受けながら民を守るため深慮遠謀を巡らせているのを知り、また人のため命や金を投げ出す貧しい庶民の生きざまに人として正しく生きることこそ銀よりも輝くと悟るのだ。友の与平次が仲間と談笑しつつ死を迎える結末は深く心にしみる。作者一流の文章力もあって見事な時代小説に仕上がっている。2021/11/27
trazom
164
澤田さんの作品は、歴史上の人物や事件を、史実に照らしながら描くというスタイルが多いが、本作品は、そういう呪縛から解き放たれた伸び伸びとした小説に仕上がっている。幕府の天領である石見銀山に生きる人々を描いた歴史群像だが、間歩、鏈、山師、掘子、吹屋、ユリ女など独特の用語で知る銀山の様子は興味深い。代官所による統治、山師の経営、堀子たちの労働など銀山特有の支配構造を背景として、気絶(けだえ)という呼吸器疾患での三十年余りの短い生涯を宿命づけられた掘子たちの切なさが心に沁みる、とても感動的な作品だった。2021/12/19
シナモン
150
とても良かったです。舞台は江戸後期の石見銀山。命を削りながら銀を掘り、その短い命を輝かせ懸命に生きる人たち。「輝山」というタイトルに込められた思いに胸が熱くなりました。思慮深い代官、小坊主の成長と母の思い、幼いうちから家族のために働く少年、飯屋の情景などいきいきと描かれる人情物語に何度もぐっと。感動の一冊でした。2021/10/21