出版社内容情報
復員した貝塚透馬は衝撃的な事実を知る。両親が殺されたーー。国際謀略渦巻く敗戦後の東京を舞台、愛と憎悪の復讐劇が始まる!
内容説明
三年半ぶりに日本の地を踏んだ復員兵の貝塚透馬は、衝撃の事実を知らされる。空襲を逃れ軽井沢の山荘に疎開していた両親が、ピストルを持った強盗に撃ち殺されたというのだ。犯人は未だ捕まっておらず、遺体の第一発見者であるメイドの八重は事件後、姿を消した。両親を殺したのは誰なのか。東京で八重の捜索を開始した透馬だったが、フランス留学時代の旧友、恵理子に再会したことで思わぬ事態に巻き込まれていく―。事件の裏に見え隠れする、ナチスの隠し財産をめぐる恐るべき国際謀略とは!?
著者等紹介
藤田宜永[フジタヨシナガ]
1950年福井県生まれ。早稲田大学文学部中退。パリ滞在中エール・フランスに勤務。76年『野望のラビリンス』で小説デビュー。95年『鋼鉄の騎士』で第48回日本推理作家協会賞長編部門、第13回日本冒険小説協会大賞特別賞をダブル受賞。その後恋愛小説へも作品の幅を拡げ、99年『求愛』で第6回島清恋愛文学賞、2001年『愛の領分』で第125回直木賞受賞。17年には『大雪物語』で第51回吉川英治文学賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
199
故藤田 宜永は、奥様、共々新作中心に読んでいる作家でした。2月の第一作目は、著者の遺作?、日活冒険活劇のような手に汗握る国際謀略ノスタルジーミステリの佳作でした。これからもう著者の新作を読めないと思うと、とても哀しいし、寂しい限りです。改めて、心からご冥福をお祈り申し上げます。2020/02/01
のぶ
77
戦後の混乱期を舞台にしたサスペンス。主人公は復員兵の貝塚透馬。三年半ぶりに本土の地を踏んだ透馬は、軽井沢の山荘に疎開していた両親が、ピストルを持った強盗に撃ち殺されたという事実を知らされる。両親を殺したのは誰なのか?読み進むうちに事件の裏にナチスの隠し財産をめぐる謀略が明らかになってくる。やがてフランス留学時代の旧友、恵理子に再会したことで思わぬ方向に進んでいく。最近の藤田さんの小説は恋愛小説の傾向が強かったが、本作は初期に冒険サスペンスの要素が盛り込まれており、自分の好きなジャンルの作品だった。2019/12/31
kei302
45
追悼読書|男と女の価値観のすれ違いを書かせたら藤田氏の右に出る小説家はいない!財宝の争奪戦に、諜報活動に、軍の再興にと夢を追う男たち。ブルーブラッド:青い血《あなたの血は、わたしたちとは違う色をしている》。八重の素直さ、忠実さが美しい。透馬が最後に恵理子に向けて言った言葉は“真理子”と読めてしまう...(涙)2020/02/05
なっく
41
この正月は、直木賞夫婦の藤田宜永・小池真理子を読もうと思っていて、まず藤田宜永の遺作である本作から。いつもながら藤田さんの描くハードボイルドは、暴力シーンは少なめで、オシャレでスマートな男たちが登場し、やたらカッコいい。本作の主人公も、フランス語や英語を操り、カーレースの腕前も抜群で、その復讐劇にミステリーやロマンスを織り交ぜたストーリーを堪能した。そう言えばサングラスがトレードマークの藤田さんは、実生活でもヘビースモーカーを止めず、肺がんで逝ってしまった、まさに自らの生き方もハードボイルドだった、合掌。2021/01/05
はれひめ
41
昭和のハードボイルド。お決まりの軽井沢と煙草とお酒。映画で観たかったです。皆さんのレビューにもありますが、石原裕次郎に宍戸錠や北原三枝のイメージ。メイドの八重はおぼこい吉永小百合で。もし書き溜めた未発表の作品があれば書籍化していただきたい。淋しいです。2020/06/09