内容説明
「ここは、銀河系の中でも、とても知的存在の密度が濃いのよ。おそらく、広大な空間のあっちこっちから集まってきているんだわ。まるで宇宙の誘蛾灯のように…」地球から五.八光年の宇宙空間に忽然と現れた巨大円筒形物体“SS”。長さ二光年、直径一.二光年と、途轍もない規模をもつこのSSへの探査は、空間的にも時間的にも、生身の人間には到底不可能なタスクであった。そこで、若き研究者・遠藤秀夫の開発した、AE(人工実存)に白羽の矢が立った。AI(人工知能)に、開発者遠藤の分身として言わば彼自身の魂を込めたAEは、長い旅路の末、SSに到着する。そこには、様々な地球外知的生命体がひしめき、共生と抗争を繰り広げていた…。戦後日本の知を代表する巨匠・小松左京が、宇宙を舞台に、「生命」「知性」「文明」「進化」の意味を問いかける、本格SF巨篇。全“知的存在”、必読の書。
著者等紹介
小松左京[コマツサキョウ]
1931年、大阪市生まれ。京大文学部卒。61年「地には平和を」で第1回空想科学小説コンテスト努力賞。62年「易仙逃里記」でデビュー。73年刊行の『日本沈没』が大ベストセラーとなり、日本推理作家協会賞を受賞。85年『首都消失』で日本SF大賞受賞。2011年7月26日、肺炎のため死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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大奥のじぃ
14
偉大なるSF作家であり妄想科学者の未完遺作をゆっくりかみしめ味わい尽くして読了するが、また再読を始めるに至ってしまう。10代のころより「星、小松、筒井」SF作家御三家を追いかけた私。1970年代の脂の乗った三氏の勢いは現代でも生き生きと伝わり私の妄想の規範として息づいているのだ。夜空を見上げ星のまたたきを見るにつけ、虚空の彼方に小松左京が笑って煙草をふかしている。2018/06/04
takehiro
12
今でこそ人工知能AIなんてよく聞くけども、それどころか人口実存AEとか仮想人格VPとか90年代に書いている小松氏は先を行き過ぎていると思った。舞台が宇宙だから当然かもしれないけど、何億年とか何光年とか、出てくる時間も距離もスケールが大き過ぎて圧倒されてしまう。虚無回廊の説明はさっぱりわからなかった笑2021/09/02
みのくま
11
小松左京最後の大作にして未完。「日本沈没」において、果てなきディアスポラを日本人に課した小松だったが、本作ではこの宇宙までもを相対化しようと試みた。この極限の相対化の末に表出せる課題は「実存とは・愛とは何か」という問いだ。小松は「日本沈没」において、我々日本人を規定する最大要素である日本列島を沈没させ、日本人である自明性を揺るがした。しかし田所博士を登場させ、その脆弱な自明性こそ実存である事を仄めかす。本作では多元宇宙の発見により、この宇宙の自明性が問われるわけだが、その結果は未完のため分からない。無念。2018/07/30
Nine
11
小松さんの巨大すぎるイメージ力に圧倒されるばかりで、どこまで、それを理解できたのか全く自信が持てない、と云うのが正直な感想になるかもしれません。話の大筋はドキドキしながらトレースする事ができましたが、ディティールに関しては雰囲気を楽しめた程度であり、自分にもっとたくさんの知識があれば、更に強烈な感動を覚えたんだろうな、と思わずにはいられませんでした。しかし…。未完とはホントに残念だ。(未完とは思えない完成度の高さでしたが)2014/05/30
Ai
7
未完なのに、おもしろい。AEの設定から、SSに到着。その後数々の知生体との接触が刺激的。最後のSF作家陣の対談も興味深く、各人の物語の展開予想がいい。山田正紀さん、書き継いでくれないかな~。2021/11/24