内容説明
北の果ての国テューレの女王と結婚したいがために、アイスランド一の物語の語り手「ネコのトード」を脅し、自分の来し方の物語を語らせようとする、邪悪な魔法使いクヴェルドルフ。だが、正直な青年トードに「物語る力を悪用することはできない」と断られると、今度は神オーディンの力を借りて命を吹き込んだ死霊たちを、トードの住む農場に送り込んだ。昼も夜も現れる霊の姿、夜中にのしかかる牛の姿のばけもの…農場の人々は次々と逃げだし、とうとうただふたり残されたトードと物乞いの老婆は、襲い来る死霊に、立ち向かおうとするが…?また、老婆の正体は…?荒々しい魅力にあふれた北欧神話を下敷きに、独自の手法で織りあげられた、不思議な雰囲気をたたえた骨太な物語。小学校中・高学年~。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
5
北欧の荒ぶる神オーディンをあがめる魔法使いクヴェルドルフが豊饒の神フレイアを崇める語り部に負けてしまう。全てにおいて勝っていたクヴェルドルフがオ―ドの勇気・人柄に負ける展開は痛快。2014/05/03
読み人知らず
4
オーディン、フレイヤといった北欧神話の神様たちが登場するこの話。オーディンが呪いの神様っぽくなっています。実際は力を分け与えただけなのですが。ハッピーエンドで終わるこの話は、なかなか読み応えもあるのに短いからさらっと読める。神話への導入としてはいい本だと思う。2009/10/01
topo
3
邪悪な魔法使いの依頼を退けたゆえ死霊に襲われる正直者の語り部の、北欧神話を下敷きにした物語。凍てつく極夜が恐怖を煽り、おぞましい死霊の正体に驚愕する。語り部の話も面白く短いながらも読み応え抜群な一冊。2021/08/16
オドリ
3
語り部のネコのトートーと、北の果ての国テューレの女王との結婚までのお話。自分の物語を語られると、人は耳を傾け力が湧いてくる。心にしまい込んだ、愛おしい思を思い出だす。理不尽な扱いをした相手に、自分は理不尽に扱われたことを知る。何物にも、変えがたい愛おしい自分を再発見する物語でした。2019/04/18
Mirae
3
10年近く探し続けて、ようやく区立図書館で発見。願いや力を対価をきっちり神に対して払わなければならない、というのが北欧神話の特徴なのかしら。2014/04/06