内容説明
グランは若いころから腕のいい猟師だったが、いつも運が悪かった。だがある冬、隣人の老猟師タルトゥの臨終に立ち会い、孫の少年ダーンと子犬トヨンを引き取ったときから、グラン一家の暮らしは大きく変わりはじめた。トヨンは優れた猟犬に育ち、グランの猟のなくてはならぬ相棒となっただけでなく、あらゆる幸運を運んできてくれるようだった。グランの娘ナータとダーンがオオカミの群れに囲まれたときも、グランが町でけんかに巻きこまれたときも、いつもトヨンが救ってくれた。だが、年月が流れ、ダーンとナータが婚約し、一家が喜びに満ちていた秋に、思いがけないことが…?自然とわかちがたく結びついた極北の人々の暮らしと,動物との絆が、しみじみと心にしみてくる、忘れがたい物語。一九五七年ドイツ児童図書賞受賞の名作、初の完訳版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はる
12
図書館本。過酷な地ではあるが豊かな地の回想として語られる物語りは安心できる。そして、わたしも「死というのは、ひとつの命から次の命にいたる橋でしかない」という言葉が分かるような年齢になってきた。四国の山の実家で雪の降るのを見ながらゆっくり読めて良かったと思う。できれば子どもの頃にも読んでおきたかったけれど。2018/02/14
ムーミン2号
8
流刑地に向かう青年が、立ち寄らせてもらったグランという裕福な猟師の家で、優れた猟犬であったトヨンの話を聞くのだが、そのトヨンのお話そのものが本作である。とにかく面白い。グランの話すトヨンの成長、活躍、人との信頼関係、絆などに心踊らされ、一緒に楽しんでいる間に終わりを迎えてしまう。物語の中ではあるけど、トヨンに会うのが楽しみになる、そんな本だった。長く本棚にひっそりと置かれたままになっていて、気にはなっていながらなかなか手にとらなかった本だけど、読んで大満足。2022/05/28
光
6
この本の作者 ニコライ カラーシニコフ。1888年シベリア生まれ。16歳で人民解放運動に加わったため、政治犯として極北地方に流されることに。おくられる途中で作者が経験した実話。1957年ドイツ児童図書賞受賞作品2015/04/30
クロ
2
トヨンは何とかしこい犬だろう。それはグラン一家が家族の一員として、トヨンを大事にしているからだろう。とりわけグランとトヨンの絆の深さには感動する。厳しい極北の大地で幸せに生きるとはどういうことなのか。グランがたびたび昔の諺を口にして教えてくれる。それは都会の今を生きる私たちにも大切な教えである。2015/04/29
kzm
1
シベリアの極めて厳しい自然の中での人と犬の話。とても面白い2021/02/07