内容説明
隋の煬帝の大業八年(六一二)一月、煬帝は長安の大興城を離れ、高句麗遠征の途上にあった。世にいう「征遼の役」。動員された兵力は百十三万余、補給の非戦闘員は二百万に達した。そのなかに申胄に身を固め、淡紅色の花を手にした一人の兵士がいた。「何という花だ、子英」と賀廷玉が声をかけた。子英とは木蘭が仮につけた字である。木蘭が女の身で男装して従軍している秘密を、賀廷玉は知るよしもなかった。彼女が生まれたとき、庭の木蘭がいっせいに咲いたことから、こう名付けられたのだ…。中国歴史ロマン巨篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ジュンジュン
3
中国歴史小説を多く発表している田中芳樹氏、本書はその初の長編。十数年ぶりの再読だが、「隋唐演義」で予習していたので、心地よく世界観に浸れた。架空の人物(男装の麗人)を通して、隋末の混乱期を実在の事件や人物と絡めながら描く。ついでながら、隋唐革命のみに特化させていたら、「隋唐演義」も「三国志」ばりの傑作になったのでは?と惜しまれる。2017/11/03
未明
1
京劇の題材などとして中国で親しまれている木蘭(もくらん)を題材にした隋唐演義。木蘭という題材は、「歳老いた父親に代わり戦に赴き、軍功をあげる」ことが大筋で、時代背景や後日談にはバリエーションがあるらしい。ディズニー映画の「ムーラン」も、京劇をベースにアレンジしてあると聞くが、本作とは時代背景が異なるので全く違う話となっていることだろう。そもそも、この話は木蘭を描きたいのではなく隋唐演義を書きたかったのだと思う。歴史は木蘭の感知しないところで動いており、その時々の彼女の様子が差し挟まれている印象だった。
ジジ
0
一人の人間が国家を、歴史を動かしてしまうという時代ってすごい。歴史ロマンていいよなぁ。そして隋朝中国の華麗な、過酷な、雄大な、凄惨な、素朴な風景がまるで眼前にひらけるかのような叙述にうなってみたり。爽やかにすてきなお話でした。2009/10/30
黒猫
0
⚔️❤️🇨🇳