内容説明
本書はある北方少数民族が、戦中、戦後の日本社会の苦難を生きぬいた感動のドラマであるとともに、先住民問題とは何か、国家の戦後責任とは何かを訴えかける問題提起の書である。毎日出版文化賞受賞作。
目次
序章 ゲンダーヌの六つの疑問
第1章 ゲンダーヌから源太郎へ
第2章 ゴシプシエィ
第3章 まぼろしの召集令状
第4章 ウィルタの祈り
第5章 ウィルタ・ゲンダーヌ
終章 ミニ トリチビ サハリンド
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
TakaUP48
32
「熱源」を読んで思い出し、数十年振りに再読。サハリンで生まれたウィルタ(オロッコ)のゲンダーヌ(北川源太郎)の幼少時代から発刊時までの歩みをまとめた本。大戦中に強制動員を受け諜報活動に従事、戦後は戦犯としてシベリアに送られ帰国。軍人恩給の支給を求めたが「正式ではない」と却下冷遇され、国への謝罪・補償を求める運動を続行。少数民族復権運動のリーダーとして活動、シンボルとしての資料館「ジャッカ・ドフニ」建設を目指した。70年代の教育研究会や高校生の少数民族文化への半端ない理解・熱意・活動が伝わってくる。 2020/05/12
印度 洋一郎
3
戦前、日本領土だった樺太に住んでいた北方の少数民族ウィルタ人(オロチョンやオロッコなどと誤解して呼ばれた)の男性の生涯を追った一冊。戦前のウィルタ人達の暮らしぶりは、正にアメリカ・インディアンのような感じ。自然の中で先祖伝来の暮らしを続けていたが、徐々に政府の"文明化"政策に晒され、この本の主人公ゲンダーヌも学校に通い、役所に就職し、良き日本人になろうとした末に陸軍特務機関に徴用される。しかし、国境警備をしていた事で「スパイ容疑」でソ連の収容所に送られ、日本に帰国した後の辛酸など、正に二十世紀の裏面史だ2017/07/01
いたる
2
樺太のウイルタ民族、ダーヒンニェニ・ゲンダーヌに北川源太郎と名付けたのは、敷香土人教育所の教師・川村秀弥である。川村はウイルタ語でも授業を行い、彼らの氏族性の伝統を守って日本名を名付けた。 ゲンダーヌは戦後スパイ容疑でシベリアに送られ、引揚後に網走へ移るも、無戸籍者として扱われた。彼は実際に日本軍の特務機関員として、国境の北緯50度線付近で諜報活動に従事していた。しかし戸籍は無く、あるのは「原住民名簿」だけだった。2018/10/30
Banjoe(祖母喪中)
0
中学の時に初めて読み、その後の物の見方・考え方に強い影響を受けた本です。
ななな☆
0
ゲンダーヌ一人を主役とした本で、先に読んだ2冊の本よりも詳しい内容だった。アイヌとの対比も参考になった。2010/11/08