内容説明
教鞭をとるかたわら、季節の星座の移ろいを書きつづった“星の人”野尻抱影。その夢あふれる文章に、夜空の楽しみを知った人のなんと多いことか。永年の星空観察の間に体験した奇怪な出来事、珍妙なエピソード、気宇壮大にして融通無碍な交友をまじえてつづる本書は、数多い“星ばなし”中の逸品。抱影研究の第一人者宮下啓三氏の人間味豊かな解題を全篇につけて、名著、待望の復刻。
目次
第1章 星まんだら(悪星退散;初対面;竜涎香記;逢魔が時;むじな話;土星を笑う;信西入道 ほか)
第2部 浜に生まれて(浜っ子;旅順開城;千里眼実験;桜新町;隣人;ある亡友;汁粉の殿様 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メイロング
3
なんで今まで知らなかったかなあああ。あわてて他の中公文庫や児童書を手に取ってみたら、ずっとこういう人を探していたような気がする。逆に「星まんだら」はまだ早かった。他の星の本を存分に楽しんでからで充分。文系サイドからの天文へのアプローチというスタンスが何より痛快。来たれ、野尻抱影の再ブレイク。2015/12/16
inarix
0
抱影の語る星の世界とは、古代ギリシャ人の見た星であり、古代中国人の見た星であり、あるいは日本各地で、農夫が、漁師が、旅人が、種まきから収穫、方角や天気までを知るために見上げたものであり、神話伝説や文芸、民俗学であり、ロマンスであった。 教師や編集者を経て、40歳にして始めて書いた『星座巡礼』で“星の人”となった経歴を持つ天文(てんぶん)学者の、生活と考え方をさまざまな話題と語り口で綴った、1949年発行の随筆集の再現。 2013/07/19
Tatsu
0
天文学者、野尻抱影の随筆集。この人結構町名で私が中学生の時まで存命でした。明治生まれの気概のある人で冥王星の命名者としても有名。この随筆はとうに絶版になったものですが、「星三百六十五夜」と併せて読むのが良いかも。エピソードで面白かったのは、戦前に連合艦隊司令長官を務めた小林 躋造が抱影の近所に引っ越してきた際の人柄を物語る一編。2012/10/22