内容説明
久慈敏浩は、国際通信会社の中枢・統括秘書室に所属する選り抜きのエリートだ。現社長・四方光林は、税関フリーパスの特典を悪用した“ゴースト”と呼ばれる密輸品を政官界にばらまくことによって安泰を図っていたが、“ゴースト”調達を担当していた杉本恒夫が急死した。折から副社長・田尻卓也の造反が囁かれるなか、久慈に“ゴースト”担当の社命が下る…。企業ぐるみの犯罪を鋭く抉る傑作問題小説。
感想・レビュー
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まつうら
32
巻末で解説者が述べているように、正しくは「社命犯罪」がこの作品のタイトルだ。つまり、会社の命令で社員が犯罪を犯すということ。こう言うと、反社会勢力やヤクザな世界の物語かと思いきや、この作品の舞台はKDDという半官半民の国策会社なのだから驚きだ。この会社は、官僚や政治家を懐柔するために絵画などの金品をばら撒いている。要は賄賂だ。そしてその賄賂とする品々を、海外出張する社員に命じて密輸入させていたのだ! コンプライアンスという言葉などなかった時代とはいえ、「社命犯罪」とは! なんとも恐ろしい響きだ。。。2022/06/13