内容説明
あまりにも強すぎるので、悪源太郎と仇名された古鷹源太郎は、悲運の子であった。上野の戦争で傷ついた源太郎は、踊りの師匠阪東巴に助けられ、江戸から東京へと激しく時代が動いていくなかで、刀を捨て、武芸を三味線に替え、新内浄瑠璃の芸人若太夫に生まれ変った。祇園の舞妓・鶴千代の姿を求めるうちに、勝海舟と再会した源太郎は、帝国海軍の士官となって剣をとるのだが…。巨匠が描く時代大作完結篇。
感想・レビュー
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がんぞ
1
昭和42年読売新聞連載。子母澤寛『勝安房守』(戦時中〜戦後連載)はまるで占領軍に“恭順”をテーマにしたかのような大作だったが、本作も維新前後の海舟が主人公源太郎の後見となって折々に人生相談するのがリアリティとなっている。“中央集権政府を作り貿易で富国強兵せねば亡国”との19世紀近代国家のテーマを誰より先に理解していた勝は、恭順表明で徳川慶喜の助命を勝ち取った。‥源太郎の西南戦争での活躍は、海軍に属していたため評価されず。対米開戦の一因となった陸・海軍の対立も匂わす。なおNHK大河ドラマ『勝海舟』は昭49年2016/06/20