出版社内容情報
なぜ「耳なし芳一」は耳を失ったのか。なぜ豊臣秀吉は朝鮮出兵で耳鼻削ぎを命じたのか。日本史上最も有名な〝残虐刑〟の真実に迫る。
内容説明
なぜ「耳なし芳一」は耳を失ったのか。なぜ豊臣秀吉は朝鮮出兵で鼻削ぎを命じたのか。史料博捜と耳塚・鼻塚の現地踏査の結果、日本史上最も有名な猟奇的習俗に隠された意外な真実が明かされる!耳鼻削ぎ図版と「爪と指」に関する論考を増補。身体部位から、日本社会の豊穣なシンボリズムを拓いた画期的論考。
目次
はじめに 耳塚・鼻塚の伝説を訪ねて
第1章 「ミミヲキリ、ハナヲソギ」は残酷か?
第2章 「耳なし芳一」は、なぜ耳を失ったのか?
第3章 戦場の耳鼻削ぎの真実
第4章 「未開」の国から、「文明」の国へ
第5章 耳塚・鼻塚の謎
終章 世界史のなかの耳鼻削ぎ
補論 中世社会のシンボリズム―爪と指
著者等紹介
清水克行[シミズカツユキ]
1971年(昭和46)年東京都生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。現在、明治大学商学部教授。専攻は日本中世史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
厩戸皇子そっくりおじさん・寺
69
私は小心なので、グロいのや怖いのは嫌いなのだが、この本はたびたび「ウギャギャー!(。´Д⊂)」と呻きながらも読むのが止められなかった。これは高野秀行の解説にある通り、著者の筆力によるものに違いないが、「むかしむかし、人間は残酷だった」という事実に希望があるからだ。耳や鼻を切り取る(鼻の場合は上唇から(。´Д⊂)ウギャ)時代も終わり、近代になり平成が来た。平成末に「人間って昔より優しくなったなぁ」と思っていたのだが、こういう残酷を経由してきたのだよなぁ。未来の日本人は更に優しくなれるはずである。おすすめ。2019/05/24
Nat
39
図書館本。まず冒頭のあたりで衝撃的だったのは、日本史で学んだ山上憶良の貧窮問答歌が盗作で、慶安の御触書は偽書だったらしいとのこと。歴史は授業で習っても真実ではないことが多いことを痛感。本題の耳鼻削ぎの刑は中世では死罪を罪一等減にした刑罰として、多様されていたらしいこと。それが戦国時代には見せしめ刑となり、秀吉に至っては朝鮮で罪のない人たちに対して乱用したとのことを知り、それは日本恨まれるよと思わず納得してしまった。この刑は江戸時代に入り段々衰退していったが、世界にも広がっていたとのこと。爪と指の論考も良!2021/09/14
ばんだねいっぺい
32
ちょっとグロテスクな「耳鼻削ぎ刑」というひとつの刑罰を定点観測して、その意味と役割が時代の変化につれ、どのように変わっていったかが物語られる。罪を憎んで人を憎まずから、罪も憎むし、人も憎むしへ変わったのかな。秀吉の朝鮮出兵は、なんか、それを聞くたびに胸が重くなる。 2019/04/10
サケ太
23
“耳鼻削ぎ刑”とは何か。日本全国に点在する耳塚、鼻塚。その実在を否定した柳田邦男、肯定した南方熊楠の論争から始まる。「耳なし芳一」、「鼻」などの物語を取り上げ、どれもこれも耳削ぎ、鼻削ぎの話ばかり。日本史の教科書で語られる民衆の姿。当時の人々にとって、“耳”、“鼻”とは何か。その価値観と刑としての価値観の変遷。“やさしさ”、“身分”、“刑の対象”、“見せしめ”、“廃れ”。これは確かに面白い。「女装」、「文明化」、「世界史」、「現在」色々なところに話が飛ぶのが楽しい。文学史料の使い方も勉強になる。2019/04/18
活字スキー
21
冒険ノンフィクション作家・高野秀行さんとの読書対談で知った日本史研究家の清水さん。「耳鼻削ぎ」という非常にキャッチーというかインパクトのあるテーマでありながら、興味の惹き方から多岐に渡る資料のあたり方及びその解釈や推論のまとめ方に至るまで、実に読み易く説得力がある。テーマがテーマだけにエンタメと呼ぶのは問題があるかもしれないが、直接知ることの出来ない歴史や文化をいきいきとイメージさせてくれる作家性は素晴らしいの一言。しかし「ぜひ多くの人のまえでブックカバーなど付けずに読んでほしい」と言われましても…… 2021/06/05