出版社内容情報
二十一世紀最大の火種となる「民族問題」。イスラム研究の第一人者が二十世紀までの紛争を総ざらえ。新時代を生きる現代人の必読書。
山内 昌之[ヤマウチ マサユキ]
著・文・その他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
61
1993年に出された新書版はパラ読みしていたが、今回補論も加えられたので通読した。オスマン帝国の宗教を軸にした「柔らかい専制」による「多民族」世界帝国がいかに解体され、その中で「民族」(著者も断っているように、その定義づけの議論には踏み込んでいないが、アイデンティティを重視した、しかも複合的なものと捉えていることは、著作全体から感じる)が多様な姿を現したかを具体例を挙げて論じている。特にバルカン(ボスニアやコソヴォ)、中東のアラブ社会を理解するために本書は必読と思う。コンパクトな補論も今を知るために重要。2022/07/10
シノウ
4
再読。イスラム圏の人たちのアイデンティティは複合的である。オスマン朝での緩やかな国家統合を担っていたのは各宗教、宗派ごとによる自治システムであるミレット制の役割が大きい。フランスからうねりが起きた、土地と国民が深く結びつき国境が大きな意味を持つようなった近代国家とはかなり相容れない概念なのかもしれない。大変読み応えがあるが、また知識を身につけたたびに何度も紐解き考えていかないといけない書籍だと思う。2019/07/14
しんさん
2
「柔らかい専制」オスマン帝国と近代国民国家主義。イスラム史の視角から。2024/09/15
masuamago
2
イスラム教国家だったオスマン帝国の崩壊とその地での国民国家形成にあたってそこに住む人のアイデンティティの確立に関して。自分が日本人としてのアイデンティティを考える時、ほとんど宗教アイデンティティは考慮しない。だけど、中東の人はそうではない。複数のアイデンティティが重層的に存在して、人々の間でズレているから均一的な国民を有する国家の設立は困難になってるというのがよく分かる。この本はかつて新書だったものに補論として2018年現在の中東情勢についての考察が追記されている。非常に興味深くオススメ。2018/05/20
ドバイ
1
30年近く前の本だが、今でもそれよりは内容は色褪せない。中東、イスラム関連の必読書だと思う。2018/05/27