出版社内容情報
長く辛い不妊治療の末、自分たちの子を産めずに特別養子縁組という手段を選んだ夫婦。
中学生で妊娠し、断腸の思いで子供を手放すことになった幼い母。
それぞれの葛藤、人生を丹念に描いた、胸に迫る長編。
第147回直木賞、第15回本屋大賞の受賞作家が到達した新境地。
河瀨直美監督も推薦!
このラストシーンはとてつもなく強いリアリティがある。「解説」より
内容説明
長く辛い不妊治療の末、特別養子縁組という手段を選んだ栗原清和・佐都子夫婦は民間団体の仲介で男子を授かる。朝斗と名づけた我が子はやがて幼稚園に通うまでに成長し、家族は平仮な日々を過ごしていた。そんなある日、夫妻のもとに電話が。それは、息子となった朝斗を「返してほしい」というものだった―。
著者等紹介
辻村深月[ツジムラミズキ]
1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ろくせい@やまもとかねよし
501
幸せを表現する「朝が来た、と。」が心に残る。大人と子供がともに時間を共有することで成立する親子関係。それ以上でも、それ以下でもないはず。幸福な親子に普遍的な成立過程などないと訴えるか。親子に血縁が不可欠だろうか。親にある程度の学歴が必要だろうか。子に両親は一人ずつでなくてはいけないだろうか。これらを是とする社会規範は必要。しかし、同時に仕様もない理由で社会規範を外れる事情の寛容も必要だと表現する。幸福感には、誠実に生きる他者を見つめ、それに寄り添う利他性の必要を感じた。終盤の「一緒に行こう」も心に残る。2020/07/15
さてさて
445
これまでの道のりがどんなに暗くても、どんなに長くてもきっと夜は明ける。そして必ず朝が来る。本来交錯するはずのなかった産みの母と育ての母、子どもを作りたくても作れなかった女性と、子どもを作る気など全くなかった女性の人生が交錯する物語。『朝斗』と『ひかり』、運命的な名前に結びつけられた二人だからこそ、きっと輝く未来が待っている。少しアッサリとしたエンディング、でもそうだからこそ、読み終わって逆に大丈夫、これで未来に続いていくんだと感じさせてくれたこの作品。『普通』に生きていく難しさを感じた、そんな作品でした。2021/11/25
三代目 びあだいまおう
401
その瞬間危うく号泣!涙なしには読めません。様々な事情により『生みの親が育てられない子供』その子供を家族として迎え『自分の子として育てたい』夫婦を繋ぐ制度、それが特別養子縁組制度。実親との親族関係はなくなり戸籍上も『育ての親の実子』と認められる。本作は、生みの親からの突然の電話『子供を返してほしい』から始まり2人の『母親』の人生を描く。あまりのリアリティーと登場人物達の苦悩が伝わり作品世界にのめり込む。虐待や育児放棄問題は後を絶たず、いわゆる『望まれない子供』は少なくない。ひとつの貴い家族の形である‼️🙇2020/03/24
bunmei
377
「子どもは親を選べない。しかし、望まれないで、この世に生を受ける子どもなんて居ないはず・・・」今の世の中の問題とも重なる、親と子の出産をテーマにした社会派ミステリー。子どもを生みたくても生めなかった母と、子どもを生んでも育てることのできずに手放すしかなかった母の両方の思いが葛藤し、親子の絆について、改めて問題提起しています。それぞれの家族が抱いている長く続く暗いトンネルの先に光を見出すものとは…。読んでいる内に、目の奥の方に、熱いものを感じてしまう感動作品です。 2019/04/02
hit4papa
355
養子を貰った夫婦と、その子を中学生で産んだ少女の物語です。本作品は、主人公が入れ替わり二つの流れを形成しています。養子の母の視点では、不妊治療のあれこれが、その子を産んだ母親の視点では、幼くして妊娠することのあれこれが、side-A、side-Bのように語られます。実母の視点の物語は、転落ものとしてスリリングです。追い詰められた悲痛さが、読者の心を揺さぶるでしょう。里親の視点の物語が、幸福を追求するものであっただけに落差が激しいのです。ラストはというと・・・随分、きれいにまとまってしまいましたね。2020/06/12