出版社内容情報
【2025全米図書賞・翻訳文学部門】ロングリストに日本人作家として唯一選出!
25の国と地域で翻訳決定。話題沸騰の芥川賞受賞作がついに文庫化。
「私の身体は生きるために壊れてきた。」
井沢釈華の背骨は、右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲している。
両親が遺したグループホームの十畳の自室から釈華は、有名私大の通信課程に通い、しがないコタツ記事を書いては収入の全額を寄付し、18禁TL小説をサイトに投稿し、零細アカウントで「生まれ変わったら高級娼婦になりたい」と呟く。
ある日、グループホームのヘルパー・田中に、そのアカウントを知られていることが発覚し――。
【文庫版の特徴】
・ルビを大幅に増やしました。
・著者が執筆にあたり大きな影響を受けたと語る『凜として灯る』の著者・荒井裕樹氏との往復書簡「世界にとっての異物になってやりたい」(「文學界」2023年8月号)は、大変話題となりましたが、今回新たな書簡を特別付録として追加し、全文を巻末に収録しました。
【目次】
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- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
水色系
19
安易な感想が書けない本。身体的には弱者、金銭的には強者の主人公。そんなんしたらいかんと言うのは簡単でもアンタは身体障害がないから私の気持ちが分からないんだと言われたら黙るしかなくなる。弱者と強者は相対的なものだと語る作者だが、私も自覚的に生きないとな。無意識に人を傷つけてはいけないな。2025/10/21
すゞめ
9
想像を遥かに超える野心作 安易な回答を許さない文章の力強さがあり、仏文学賞最終候補も頷ける ラストで世界が見事に反転する仕掛けも鳥肌モノだった 紙の本の健常者優位主義を憎む主人公。その叫びは本書を紙の本で読む我々に深く深く突き刺さる 紙の本を推す行為が、実は暴力性を孕むこと…殴られるような衝撃もありつつ、本書はブラックユーモアにも溢れており、その匙加減の巧さも著者の真骨頂だと個人的に思う 強者と弱者の相対性についての話が興味深く、本書は正に障害者=弱者の図式を心地よいほど破壊してくれる作品だなと感じた2025/10/19
CTC
7
10月の文春文庫新刊。初出は『文學界23年5月号』(巻末の文学研究者=荒井裕樹との“往復書簡”は同年8月号)。第169回芥川賞受賞作。 芥川賞作品を読むのはモブノリオ(131回の『介護入門』…題材が近いのは偶然か…笑笑)以来だ。 「怒りだけで書きました」と読書バリアフリーを訴える著者の受賞コメントをリアルタイムに聞いても…正直頭に入ってこなかった。無知の罪深さ、今になって漸く理解できた。紙の本を書店で選べることの尊さを私は信じているのだけれど…それをも包摂した、もっと大きな本の可能性に気付かされた次第。2025/10/17
フクロウ
5
筋疾患先天性ミオパチーの患者にとっては、「普通」のことは、全く「普通」ではない。文学が、自分ではない他者の心や認識を知るツールだとすれば、これは紛れもない文学だろう。最後の紗花パート、「胡蝶の夢」っぽかった。2025/10/18
志村琴音
5
【再読】 衝撃的で重いんだけれど、文体もあってか軽快な印象で読みやすかった。 また、文庫化にあたって新録されたのが解説ではなく、市川さんと荒井裕樹との往復書簡だったのも良かった。 薄いながらも強烈な一冊。2025/10/08




