出版社内容情報
夫が嫌いな上品な老婦人、段ボールにひきこもる少年、悲劇のヒロインを演じる女性……臨床心理士の著者は、日々の出来事やカウンセリングを通して出会う人々の大きな重荷を背負った心が変化する瞬間を掬い上げる。あなたが見失ってしまっている心にもう一度出会うためのヒントが詰まったエッセイ集。解説・辻村深月
内容説明
夫が嫌いな上品な老婦人、段ボールにひきこもる少年、悲劇のヒロインを演じる女性…臨床心理士の著者は、日々の出来事やカウンセリングを通して出会う人々の大きな重荷を背負った心が変化する瞬間を掬い上げる。あなたが見失ってしまっている心にもう一度出会うためのヒントが詰まったエッセイ集。
目次
春(バジーさんが転んだ;メールで卓球 ほか)
夏(補欠の品格;補欠の人格 ほか)
秋(午前4時の言葉たち;雑談賛歌 ほか)
冬(中学受験の神様;ハルマゲドンの後で ほか)
また、春(孤独の形;段ボール国家 ほか)
著者等紹介
東畑開人[トウハタカイト]
1983年生まれ。2010年京都大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。臨床心理士・公認心理師。沖縄の精神科クリニックでの勤務を経て、14年から十文字学園女子大学専任講師、19年から准教授、22年に退職。17年より白金高輪カウンセリングルームを主宰。著書『居るのはつらいよ』で第19回大佛次郎論壇賞、第10回紀伊國屋じんぶん大賞2020大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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はっせー
44
本書は公認心理師の東畑さんが描いたエッセイ。時期としては2020年から2021年の1年間。その時期だとちょうどコロナ禍真っ最中でしたよね?コロナ本になりそうな所、東畑さんは違う。コロナについて描いているが、主題としては「心」。春夏秋冬。各季節で東畑さんが感じたことやカウンセリングの話を交えて話が展開される。本書を一言でまとめるなら「心のセーフティネット」ではないかと考えた!2025/03/14
olive
32
あの文春砲と呼ばれる雑誌での掲載。まさに心はひとつじゃないと示している?読みやすい、おもしろい、ハッとする、三拍子の一冊。クスっとした笑いで本題へ誘導し気づきをもたらせてくれる。なので付箋貼りまくり~心がひとつじゃないから人は悩むのだ。・こころには心が二つある。私の心と読者であるあなたの心だ。心が一つ存在するために、心は必ず二ついる。(本文より)だから私は本を読みドラマを見るのかしれない。だから私は人と話がしたのかもしれない。人と繋がるという対話の本質が書かれたエッセイ本だった2025/05/01
90ac
21
小さな物語の中に自分の役に立つものがあるかもしれないと思って読みました。まえがきには、読みやすくて、楽しい、と書いてありますが、私には読みにくかった。比喩が多いからかな。小さな物語がたくさん集まった作品なので、物語の区切りで止めれば、続きはいつでも読めます。時間をかけてゆっくり読みました。あとがきに書いてありますが、実際の事例は“秘密”なのですから、エピソードは「創作」した、と書かれていてさすがだなと思いました。もう一度読み直してみたい本です。2025/06/10
R子
17
臨床心理士によるエッセイ。自身やクライエントのエピソードを通じて、人が変化する瞬間を見つめている。自身の深く暗い感情や出来事を相手にみせるのは、簡単ではないだろう。しかし、そうした傷つきや痛みを外に発する力こそが、変化のきっかけをつくるのだと気づかされた。「物語は傷つきを核として生まれてくる」。傷つきや痛みによって散乱した断片も、整理して語りなおすことによって物語(=傷跡)になっていくのだ。1エピソード5ページと短く軽い読み心地だが、読んでいてはっとさせられる言葉がちりばめられていた。2025/04/27
泉
7
豊富な語彙力でゆるゆると心を溶かしてくれる。小さなエピソードに自分の記憶や想いが呼び起こされる。 社会人として何事も自分にベクトルを向けることを刷り込まれてきたものだから、その心のピンと張り詰めていた部分に「そして実際のところ、問題があなたにないことも多いのである。」の一文が沁みた。やっぱりそうなのか。2025/04/27