内容説明
父の死という重い十字架を背負った女・影山莉菜は釧路の街を裏社会から牛耳っていた。亡父である博人の血をひく青年を自らの後継者とするため、代議士への道を歩ませようとする。だが、かつてのやり方では街を支配できなくなり、後継ぎとなるはずの青年も…。裏切りに直面した彼女が、人生の最後に見た景色とは。
著者等紹介
桜木紫乃[サクラギシノ]
1965年北海道釧路市生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。07年、同作を収録した『氷平線』で単行本デビュー。13年『ラブレス』で第19回島清恋愛文学賞、同年『ホテルローヤル』で第149回直木賞、20年『家族じまい』で第15回中央公論文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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じいじ
80
桜木紫乃の小説は、北海道在住の仲間、宇江佐真理と比べると昏いモードが漂っているのだが、何故が惹かれてしまう。19作品でひと休み中だったが、9年前に読んだ『ブルース』の第二段と言うことで読んでみた。義父・影山博人の跡を継いだ娘の莉菜を主人公にした連作短篇は、テンポがよく面白かった。死んでも随所に、親父の凄みがまだ生き残っています。「守りたい人のためなら、いくらでも悪になれる…」の精神は脈々と生き続けています。読了した今朝の東京はこの上なく寒かった。でも、この小説の舞台の釧路はこんなもんではないのだろうが…。2024/12/15
セシルの夕陽
52
『ブルース』の続編として本書を手に取った読者は、影山博人に恋をしていると思う。本書の主人公:莉菜は、継父の博人に恋焦がれ、この世にいない博人の亡霊をいつも追いかける。莉菜の目標は、博人の遺伝子を受け継いだ武博を、代わりに担ぎ上げること。道東の釧路の裏社会を牛耳るも、その土地をどこかで恨んでいる。『ブルース』は博人の視点で描かれなかったが、本書は莉菜の視点でしか語られていない…両書とも【女目線】なのだ。「男と違って女のワルには、できないことはない」は莉菜の呪縛ではなかったのか⁈ 紫乃氏作品は、余韻が凄い。2024/09/29
カブ
36
釧路を舞台に、裏社会を生きる影山莉菜、まるで映画のようなこんな話、好きです。2024/08/29
Shoji
35
前作『ブルース』は物語全編を通して、緊張感に包まれ、危険な香りが漂うストーリーだったのを覚えている。主人公の影山博人が釧路の裏社会で成り上がっていく話で、スリルに満ちていた。本作『ブルースred』は、影山博人の義理の娘、莉菜が主人公だ。義父の影山博人同様、莉菜も釧路の裏社会を牛耳っていた。手段を選ばない莉菜は政治の力さえ手中にしており、莉菜の周辺は常にヒリヒリしていた。気が付けば、読み手側の私もその緊張感に引きずり込まれていた。面白かった。2024/08/16
ミエル
33
女のワルにはできないことはないー。ヒロトの娘は父の輪郭を踏襲し、立派な「女のワル」を貫く。写真家を辞め裏社会を牛耳り、ヒロトが秘密裏に残した一粒種を影山博人の生写しのように愛し育てる。前作に登場した女たちの中で、誰よりもヒロトに恋焦がれていた莉菜の半生のダークさはヒロトのそれに劣らない。血の繋がりがなくても親子、この事実が莉菜の拠り所でありマウントの原点。女だなぁ笑 女度が低い私には全くありえない生き方をする莉菜が興味深い。街の匂いから人物像まで圧倒的な昭和ノワール感が全開、任侠映画のよう。2024/09/26