内容説明
歴史の敗者に注目し、数々の優れた小説を世に送り出してきた著者。本書は最晩年に、古代から近現代まで数多の天災・戦いをくぐり抜けてきた西国を歩いた記録である。西郷隆盛の鹿児島、遠藤周作の長崎、石牟礼道子の水俣。絶望が祈りへと変る時に文学が立ち上がる。その様を捉えた、歴史紀行にして葉室作品への最高のブックガイド。
目次
第1部 西国を歩く(防塁は知るや不屈の士―元寇と「正気の歌」 福岡;覇者の晩年愛に包まれ―大友宗麟 臼杵(大分県) ほか)
第2部 先人を訪ねて(被爆の光景逃れ炭坑へ 筑豊(福岡県)
土筆摘む背中追いかけて ほか)
第3部 苦難の先に(熊本の友へ;希望の芽吹きを信じて 熊本;先人が問う「国のかたち」 熊本;苦難乗り越え静謐祈る 秋月(福岡県))
第4部 曙光を探して(インタビュー「司馬さんの先」私たちの役目;「葉室メモ」―「曙光を旅する」出発を前に)
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951年北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年『乾山晩愁』で第29回歴史文学賞を受賞し作家デビュー。2007年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞、2012年『蜩ノ記』で第146回直木賞、2016年『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞を受賞。2017年12月23日、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
84
葉室さんによる、主に歴史に関係ある土地を巡り歩いた感想を集成したものだといえるのでしょう。ご自分のテリトリーである西国中心のもので、司馬遼太郎の「街道をゆく」を意識されたものだという気がしました。その場所に関連あるご自分の敬愛する作家などについても述べられていています。葉室さんと同行された朝日新聞記者のあとがきや娘さんの思い出等も掲載されています。2024/03/26
coldsurgeon
7
曙光とは、暗黒の中にわずかに現れ始める明るいきざしである。没後6年の葉室麟氏は、大好きな歴史時代小説作家だった。彼が歴史を見つめ、葉室史観ともいうべきものを提示した旅行エッセイを読んだ。近代の闇から放たれた曙光によって次代の形を浮かび上がらせる力のある彼の小説を思い浮かべる。歴史の中の、ついつい「輝かしい記憶」に縋りつく衝動を克服して、物語を読み解かなくては、と思う。誰かの健康を害してしか成り立たぬような文化生活であるのならば、その文化生活をこそ問い直さなければならない、と。2024/03/18
Mituya Hasegawa
1
葉室麟さんの小説の背景がよく見える。 そんな歴史紀行。 葉室麟さんの小説が無性に読みたくなりました。📖 2024/02/29
-
- 和書
- くたばれ!ハリウッド