内容説明
大阪万博、三島由紀夫の自決、ロッキード事件、日本初の五つ子誕生…この国の戦後史を賑やかした様々な事件に立ち会った人々の視点を自由自在に乗り換えながら、作家はどこまでも遠くに語りを滑らせていく。あの「蒙昧」の時代の生々しい空気を甦らせる傑作長篇。第56回谷崎潤一郎賞受賞作。
著者等紹介
磯〓憲一郎[イソザキケンイチロウ]
1965年千葉県生まれ。2007年に「肝心の子供」で第44回文藝賞、09年に「終の住処」で第141回芥川賞、11年に『赤の他人の瓜二つ』で第21回Bunkamuraドゥマゴ文学賞、13年に『往古来今』で第41回泉鏡花文学賞、20年に『日本蒙昧前史』で第56回谷崎潤一郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
フリウリ
9
句点ではなく読点を多用して、改行少なく進む「文体」は、最近の保坂和志氏や、プルーストの井上訳を連想しました。出来事に語らせるという意味では、日本国(あるいは日本語の社会)を主人公にした、私小説のように読めました。ただ、私小説のように強みと弱みが併存していて…、つまり、覗き見や噂話としてはおもしろいけれど、どこか他人事のように聞こえ、通念への疑いを揺さぶるというようなことはない、という感じがしました。図書館の新刊コーナーで発見した初読みの作家さんでしたが、他の作品も読んでみようか?と思います。72024/01/07
Foufou
7
読み始めるや、これはなんなんだと戸惑いつつも、あれよと引き込まれて、イッキ読み。大変面白い試みだし、随所で心揺さぶられました。ただ、同時代を生きる人間としての共感では全くない。よく知られた史実を語りながら、シームレスに個の物語へ接続するありように、エキサイトするのですね。いや、これ、現代の話なんですよね。小説の力の復権、とでも言いたくなるような事態が散見される。この作家はどこから来てどこへ向かうのか。2024/01/15
まーくん
5
これまでに感じたことのない読書経験だった。未知の作者で、始めはセンテンスの長い文章に戸惑ったが、グイグイと読ませる力に驚いた。川上弘美さんの解説が見事。2024/01/08
澤唯
3
いい意味でとても不思議な本だった その不思議な感じを川上弘美さんが丁寧に解説してくれて助かった いつかまたじっくり読んでみたい2024/03/15
辻本 敏久
2
昭和のあれこれ。2024/02/05