内容説明
引っ越しを繰り返した孤独な幼少期、数少ない友達は両親が与えてくれた物語の世界だった―。ミステリー界を牽引する小説家・柚月裕子が綴る、書く喜びと書き続ける苦悩。そして、東日本大震災での大切な家族との哀別のこと。日常の出来事から創作の裏話まで、デビューから作家生活15年の軌跡を追うオリジナル初エッセイ集。
目次
ふたつの時間(記憶のなかの料理;違いは間違いではない;道の記憶;安心なる不安;祭りのひよこ ほか)
ふたりの自分(見捨てないで;黙々と;津波;あの日からのふたりの自分;ふたつの時間)
著者等紹介
柚月裕子[ユズキユウコ]
1968年岩手県生まれ。2008年『臨床真理』で第7回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞を受賞。16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。18年『盤上の向日葵』で「2018年本屋大賞」2位(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
166
柚月作品は大大大好き。作家生活15周年の初エッセイ集と来たら読まずにいられない(読友さんありがとう)真面目な方なんだ!というのが一番先に感じたこと。『仁義なき戦い』からの『孤狼の血』ってのがしっくりきた(笑)柚月さんの中にあの震災が色濃く占められているのも宜なるかな・・(たしか実母は癌で亡くされていて、既に再婚されていた両親を震災で・・)あの日を境にというのは誰しもあるかもしれないが、もう会うことが叶わないというのは切ない。「面白かった」という準備は出来ている私なので、これからも期待してしまう。2023/11/30
KAZOO
145
この筆者さんの作品はほとんど読んできています(上水流涼子シリーズのみ未読)。初めてのエッセイということですが、幼少のころからの思い出やご両親(宮古で東日本大震災で亡くなられています)のこと、読書の感想などが肩ひじ張らずに書かれています。また写真も趣味でご自分で撮られた作品もいくつか収められています。読書の感想での北重人さんの「汐の名残り」を読んでみたくなりました。2024/06/15
あすなろ
129
なんと柚月氏デビュー15年にして初のエッセイ集。愉しみに一気読み。 柚月氏の選ぶ作品テーマやそのナイフで断ち切った様な硬筆な筆致は何故産まれるのかを自ら少し解きほぐしてくれる一冊だったのである。その中身はここでは書くまい。ファンならではの大きな愉しみなので。あとがきに書かれているのは、個が好きであり、闘ってもがき喘ぎ、泣きながら懸命に前に進もうとする個が好きなのだ、とある。なるほどなと思う。そして、いつかは東日本大震災についても涙を乗り越えお書き頂きたいとも思う。ファンには必須の一冊。2024/05/19
のり
102
高田郁・宮下奈都・今村翔吾、そして柚月裕子でエッセイ集は4冊目になった。作家15年とは意外にもデビューはそんなに早くはなかった。しかし幼少の頃から本を手にする機会に恵まれ、好きが作家にまで上りつめた。下地はきっとあったのだろう。しかし、東日本大震災で家族を失った。その失意ははかり知れない事だったろう。それでも彼女は次々と良書を書き続けてくれた。これからの活躍にも期待する。2024/02/27
mike
89
柚月さんが、慣れ親しんだ美しい自然の風景や、母と触れ合った日々の想い出、自分が歩んで来た道に思いを馳せながら綴った優しくて温かい15年間のエッセイ。山形と本と猫への溢れんばかりの愛がいっぱい。「孤狼」や「盤上」といった名作の誕生秘話はとても興味深い。三陸で生まれた彼女はあの津波でご両親を亡くされているそうだ。最後まで読むと、このタイトルに込められた想いが強く伝わって来る。柚月裕子という一人の女性を私は増々好きになった。2024/03/15