内容説明
魯で季孫氏の家宰・陽虎がクーデタを起こすが、彼も国を逐われ、孔丘は政務に就く。が、その存在を危険視され、55歳で魯を逐われる。衛から宋、陳、葉と、弟子達と放浪するが、この時期こそが後に東アジアの人々の精神生活を規定する「儒教」の礎となった。『論語』だけでは見えてこない人間・孔丘の姿を蘇らせた傑作。
著者等紹介
宮城谷昌光[ミヤギタニマサミツ]
昭和20(1945)年、蒲郡市に生まれる。早稲田大学文学部卒。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事、創作をはじめる。その後帰郷、ながい空白ののち「王家の風日」を完成。平成3年、「天空の舟」で新田次郎文学賞、「夏姫春秋」で直木賞、「重耳」で平成6年芸術選奨文部大臣賞、「子産」で平成13年の吉川英治文学賞を受賞。平成16年に菊池寛賞を受賞、平成18年に紫綬褒章を受章。平成28年に「劉邦」で毎日芸術賞を受賞。同年、旭日小綬章を受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みこ
28
政争に敗れ、諸国を放浪することになった孔子の後半生は文字通り長い旅の生涯だった。同時に十五で学を志し、学問を追求し続けた彼の生涯もまた長い旅路を行く一生だった。国民を思う国の在り方、相手を敬う人の在り方、彼は今の世界をどう見ているのだろうか。2023/12/03
Tomoichi
25
キリストや孔子も正直パッとしない人生です。でもその後弟子たちによって後世に大いなる影響を及ぼす。どちらも一種の変人で強烈な個性の持ち主だったと思うが、孔子はこの物語を読む限りとても人間臭い。他の宮城谷作品と少し趣向が違うかもしれないが、大変面白い作品でした。2024/10/20
Hatann
8
礼を知ることを大事とした孔丘であったが、基本理念である仁の概念を敵対する陽虎から知らされたという設定に驚く。仁という言葉に初めて触れた孔子の内面を妄想することで、基本理念を肉声化させた。弟子のなかでは顔回などにはあまり触れられず、初期から教団を支えた閔損、秦祥、漆雕啓などが頻繁に登場する。思想家としての成長を高めた十四年に亘る放浪も、優秀なスタッフの支えがあってのもの。師弟関係でなく、トップとスタッフの関係に準えて集団を描くことで、現実社会の人間として成熟していくリアルな孔子伝が浮かび上がる。流石の一冊。2023/12/31
新父帰る
7
2023年10月刊。読み応えがあった。孔子の生涯を描く難しさは、論語では、孔子が発言をした年月日を特定できない所が難所。本書には、随所に論語の引用があるが、物語の流れとしてその引用は自然だと感じた。正に著者の力量発揮だ。この本が目指す孔子の像は聖人君主ではなく、人間臭い像を前提に進めているという印象。著者自身もその様に想定している。ここでのハイライトは無頼の陽虎との仁に関する孔子との対話であろうと解説も指摘しているが、この辺の解釈は大変驚かされた。著者は50代の時に筆を折り、70代で決意して筆を執った。2024/05/25
エストラゴン
5
決して読みやすい本ではありません。私にとっては漢字が難しいし、登場人物多すぎです。今アニメのキングダムにはまっているため国については多少わかりましたし、孔子様はキングダムの前の時代だったのかと改めて中国歴史の奥深さと面白さをしりました。だってこのころ日本は縄文時代です。2024/08/04