内容説明
春秋時代、魯に生を享けた孔丘は、家族の情愛に恵まれずに育つが、詩と礼を愛する青年となる。三十で官途を辞し、首都・曲阜に建てた教場には次々と若者達が入門してきた。有力貴族が主君を脅かす魯にあって古の学問への探究心やみがたく、四十を迎えんとする孔丘は、先進国・周に留学する。稀代の教育者の生涯を描く大河小説。
著者等紹介
宮城谷昌光[ミヤギタニマサミツ]
昭和20(1945)年、蒲郡市に生まれる。早稲田大学文学部卒。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事、創作をはじめる。その後帰郷、ながい空白ののち「王家の風日」を完成。平成3年、「天空の舟」で新田次郎文学賞、「夏姫春秋」で直木賞、「重耳」で平成6年芸術選奨文部大臣賞、「子産」で平成13年の吉川英治文学賞を受賞。平成16年に菊池寛賞を受賞、平成18年に紫綬褒章を受章。平成28年に「劉邦」で毎日芸術賞を受賞。同年、旭日小綬章を受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みこ
24
孔子の生涯を描く。名は知られていても人となりなどは見えてこなかっただけに、短気だったり、家庭が上手くいかなかったりと人間臭さが垣間見える。仲由や子開が弟子入りする過程は勝海舟と坂本龍馬のよう。知らない人から敬遠されながらも、会えば魅了される孔子の後半生に期待を持ちつつ下巻へ続く。2023/11/25
新父帰る
10
2023年10月刊。著者の作品は以前、10種くらい読んだ。この書の前に三国志が出ていたが、待望の孔子の本が出たので早速手に入れた。孔子に関する記録は沢山あるが、この書の人物像はよく書けていたと思う。しかし、ストリーの転換をもう少し、丁寧にと思った。例えば、周都で老子に孔丘は弟子入りするが、6年間の留学の割合には老子と孔丘の対話の記述が少ない。実際、どのような記録が残っているのか調べてみたい。この点少し残念だった。全体的にボリュウーム感がなかった。これから下巻を読み進めるが、どのような展開になるか楽しみだ。2024/03/20
Hatann
10
儒家の始祖とされる孔丘の生涯を小説化した。神格化した孔子ではなく、失言もあり失敗もあった孔丘という人間を描く。孔丘は、権力者の言葉が法となり、矛盾する礼が失われることを危惧する。すべての官民が詩と書を学ぶことにより、礼を知ることで理想的な国家を維持できると考え、自らも常に学び続けた。立志することで家族との軋轢と生み、貴族層にも取り上げられず苦悶しつつも、成周に留学して、周王朝の元司書から学ぶことで確信を得る。史記に記された老聃との邂逅を否定しつつ、先生(老子)からの学びが不可欠の体験だったことを示す。2023/12/28
サチオ
7
以前、教えるためには真に理解が必要と職場の先輩から教えてもらった事がある。 その起源が孔丘の語った「教えることは、学ぶことだ」という言葉であったと思うと、それだけでも驚きを覚えた。 著者の作品の中でもここまで家族に恵まれない主人公は記憶に無く、息子の孔鯉とのこれからが気になります。2024/02/05
ぴんぐ
7
この著者の春秋戦国時代の作品はいろいろと読みましたが、その多くは武将や宰相として活躍するものだったのに比べて、孔丘は戦でも政治でもなく、市井において礼を広める思想家であり、少し地味な印象がしました。 主人公である孔子の教えは、誰もが漢文などで目にしたことのあるもので、日本の文化や日本人の思考にも深く根付いているものであるにも関わらず、どういった人物であるのかほぼ知らない状況でした。 礼をもって、世の中をよいものにしていくという考え方は素晴らしいものですが、下巻でどう儒教につながっていくのか楽しみです。2024/01/31