内容説明
「もう、嫌だ!」定職にもつかず浮気と借金を繰り返す亭主の元を飛び出した絵乃は、ひょんなことから離縁の調停を得意とする公事宿「狸穴屋」の手代見習いとなる。そこに舞い込んでくるのは、いずれも家族の“情”がこじれた難題ばかり。果たして絵乃は一人前の公事師となり、自身の離縁も成し遂げられるか!?
著者等紹介
西條奈加[サイジョウナカ]
1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞してデビュー。12年『涅槃の雪』で中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で吉川英治文学新人賞、21年『心淋し川』で直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
チーママ
80
江戸時代の離縁トラブルを仲裁したり訴訟の手助けをする公事宿(くじやど)を舞台にした連作短編集。ダメンズの夫と別れたい絵乃は、ひょんなことから公事師見習いになり、公事宿『狸穴屋』の女将の桐、手代の椋郎、元手代の志賀らの指導を受けながら、さまざまな離縁問題にあたる。「公事宿は他人さまの家内に土足で入って腹の中を一切合切吐いてもらう商いなんだ。綺麗ごとだけじゃやっていけない」。桐の言葉に吹っ切れた絵乃は…。ラストの展開はやれやれなのだろうか。一抹の不安を感じるのは私だけ?2025/03/29
のんちゃん
61
江戸馬喰町。絵乃は夫が浮気者で借金苦。全てが嫌になって佇んでいた折、離縁の調停が得意の公事宿狸穴屋の手代に出会い、自身もそこで手代となるべく働き出す。公事宿とは現代の弁護士事務所の様なもので、訴訟の書類作成や手続き代行をする所。地方からの依頼人がある為宿も営んでいる。物語はそこに持ち込まれる夫婦、親子等の案件と絵乃自身の話で構成される。西條先生の安定感のある話運びで、既読作同様、楽しめる。プラス今作は江戸の訴訟事情、特に離縁に関して詳しく知れる。もちろんいつも通り人情味たっぷりの展開だ。続編もあるかな。2023/04/09
shincha
48
現代の家庭裁判所の原型?みたいな公事。公事宿の株を持ち、おかみ公認の公事宿(狸穴屋)の主は、7度の離縁を経験している桐。そこに見習いとして世話になることになった主人公の絵乃。男からしか離縁の三行半をすることが許されなかった時代。絵乃の糞亭主との離縁のために自ら動くこととなる。登場人物が皆、個性的で、これはシリーズ化されることで、絵乃の成長物語となるはずだ!西條さんお願いします。2024/09/24
ゴルフ72
46
これまで時代物はよく読んでいたが、公事方という言葉を聞いたのは初めて!(ひょっとしたら出てきたかも?ですが…)絵乃さんがどうしようもない富次郎と別れたいでも出来ない。そんな時、狸穴宿の手代椋郎に会う。そこからこの物語が始まっていく。この狸穴屋の女将桐さんが良いんです。ラストに向かい展開が面白くなっていく。2023/11/14
papako
44
日本では妻という立場はこんなにも自由にならないものだったんだ。絵乃はちゃんと自分の世界を広げられてよかった。母親と再会、和解ができてよかった。椋郎との未来はあるのかしらね。西條作品としては短く単純なというか分かりやすいお話でした。2024/07/26