内容説明
江戸文化の残る東京に生まれ、株屋や役所などで働きながら映画と芝居に熱中した池波正太郎。戦後は長谷川伸に師事し、三十を過ぎて小説執筆を始める。みずからを職人と見立てることで、『鬼平犯科帳』を始めとする多くの優れた小説、エッセイを遺した。気鋭の批評家が軽快な語り口で池波ワールドの魅力に迫る。
目次
遠い日の幻影
江戸の風韻
師弟の様子
歴史を見つめる眼
善人でもなく悪人でもなく
池波小説は美人に冷たい!?
「省略の余韻」と「簡潔の美」
江戸っ子ぶらない
会話と人物造型
不器用な名人
「才能」と「意匠」
命名の達人
『鬼平犯科帳』の斬新
「歴史」と「小説」のせめぎ合い
反歴史主義
等身大史眼
著者等紹介
里中哲彦[サトナカテツヒコ]
1959(昭和34)年生まれ。現在、河合文化教育研究所研究員(「現代史研究会」主宰)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tamami
51
本末転倒と言うべきか、以前ネットで入手した大部な池波正太郎著作集を、端から読むべく本書を手に取る。江戸情緒溢れる作家の生い立ちから、後年作家池波正太郎を産み出すことになる江戸愛、映画への傾倒、師弟の交わり等々が詳しく記される。後半は、池波正太郎の作家としての資質、小説執筆の骨法等にも筆が及び、併せて主要な池波作品の紹介と鑑賞のポイントが示される。作品中の人物の名前の秘密など、著者ならではの視点や知識が満載で、面白さをこれでもかと言うくらいに伝える。さて読み始めの第一作目は『幕末遊撃隊』。楽しみにしたい。2023/01/24
HaruNuevo
6
『ずばり』、まさにずばり。 20代の読書は、池波正太郎を中心に回っていたと言っても良いくらいなのだが、楽しく読む一方で、楽しすぎて深く思考することなく読んできてしまったかもしれない。そんな自分でも、意識の奥底で感じていた池波正太郎のすごさを、明確に言語化して提示してくれた一冊だ。 完本池波正太郎大成、欲しくなってしまった。スペース的に無理だけど。2023/01/21
オールド・ボリシェビク
4
池波正太郎の作品世界、人生観に心酔した批評家による一冊。著者はビートルズやアメリカ音楽に詳しい人なのだが、、ものを書く根底には池波ワールドがあるということである。「人間学の教科書として読みました。三十歳をこえて、池波大学教養学部人間専攻の学生になった気分でした」と書く。池波作品の登場人物にもすべて精通しており、ガイド役には最適。江戸情緒、職人気質、などなどのキーワードを駆使し、読者を確実な読みへと導いてくれる。2024/09/25
Kuliyama
1
池波さんの著作を読み直したくなりました。2023/10/08