内容説明
大学生の克己は実習グループの紅一点である亜紀に好意を抱く。交際経験がなく、他の男子も彼女を狙っていると知り、一歩引いていた克己だが、亜紀から「二人で会いたい」と思わぬ誘いがあって―(書き下ろし「数学科の女」)。他に日本推理作家協会賞候補「夫の余命」など、いずれも驚愕の結末が待ち受ける超絶ミステリ7篇。
著者等紹介
乾くるみ[イヌイクルミ]
1963年、静岡県生まれ。静岡大学理学部数学科卒業。98年、『Jの神話』で第4回メフィスト賞を受賞し作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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雪紫
92
タイトル決定時の心境「ハートフル(ボッコ)・ラブでしょ。乾さんだし」読了後「ある程度間違っちゃいないボッコボコ」。乾さんの短編集おなじみ暗号はないけど理数系作家らしさが極めて良く出た短編集。「夫の余命」はやっぱりやばーい。「九百十七円」好きはさておき「数学科の女」はファンならいつもより警戒心強強になるのにそれでも「うわぁ」となるのなんなん。乾さんのラブなんて昔からあれでしたね。好きだけど。一番は「夫の余命」だけどそういう意味なら「カフカ的」は好みだった。HEARTならぬ乾さんのHURTなラブをご賞味あれ。2022/12/12
yukaring
80
タイトル『ハートフル・ラブ』とは全くうらはらなイヤミス的な短編集。それも乾さんらしいどんでん返しが光るトリッキーなお話ばかり。余命宣告をされた新婚夫婦の語りをしんみり読んでいると世界が反転する「夫の余命」、偶然再会した旧友に持ちかけられた交換殺人の行方「カフカ的」、推しとの握手会を楽しむアイドルとファンを描く「なんて素敵な握手会」などどれも思わぬ展開を楽しめるが、美女を巡って起こる男子学生たちの争いから驚愕の結果が待ち受ける「数学科の女」が特に秀逸。作者の仕掛けを堪能しながらサクッと読めるおすすめの1冊。2022/12/20
ごみごみ
78
さすがどんでん返しの名手!著者の技がたっぷり堪能できる7つの短編集。「夫の余命」「なんて素敵な握手会」は既読だったのでオチも覚えていたが、分かっていて読んでも巧いな〜と唸らされる。後半は数字が絡んだ作品3編。くるみさん、数学が得意なのかな?鮮やかさが光る。特に最終話の書き下ろし「数学科の女」の計算は恐ろしいほど。みんなそうだったんじゃないの?という予想はつくものの、誰にも責められることなく、彼らをあのラストの思考に導くところまでもが計算だったとしたら…完敗!2022/12/27
cinos
68
数学科の女、乾くるみでなければ騙されたと思います。が、こういうラブストーリー、好きです。なんて素敵な握手会、短いのに驚愕!2023/01/12
よつば🍀
64
「夫の余命」「同級生」「カフカ的」「なんて素敵な握手会」「消費税狂騒曲」「九百十七円は高すぎる」「数学科の女」七話収録の短編集。タイトルから心温まる愛の物語かと思いきや、装丁の綴りを良く見るとHURTFUL LOVESとある。愛は愛でも正反対の傷つける方。確かに至る所に毒がみっちり仕込まれていた。殆どは既読だったが、最終話の「数学科の女」だけは書き下ろし。舞台は都内の大学。実習グループの紅一点の美女・亜紀と、彼女に好意を抱く四人の男子学生。狐と狸の化かし合いのような展開から目が離せない。最後のオチも絶妙。2023/05/18