出版社内容情報
米澤 穂信[ヨネザワ ホノブ]
著・文・その他
内容説明
無人になって6年が過ぎた山間の集落・蓑石を再生させるプロジェクトが市長の肝いりで始動した。市役所の「甦り課」で移住者たちの支援を担当することになった万願寺だが、課長の西野も新人の観山もやる気なし。しかも、集まった住民たちは、次々とトラブルに見舞われ、一人また一人と蓑石を去って行き…。
著者等紹介
米澤穂信[ヨネザワホノブ]
1978年、岐阜県生まれ。2001年、『氷菓』で第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞しデビュー。11年、『折れた竜骨』で第64回日本推理作家協会賞、14年、『満願』で第27回山本周五郎賞、21年、『黒牢城』で第12回山田風太郎賞、22年、第166回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
127
懐かしい。このスピリット、古典部だね。もちろん、主人公達は市職員だから大人の事情は絡むんだけど、このリズムのあり方はそうだわ。氷菓とか、思い出しちゃった。 上司と彼の関係は、古典部のように続いて欲しいと強く希望。米澤さんの作品では、こういうタイプのミステリが私は好みです。まあ、池井戸さんにしろ、現代のポレミックな観点のひとつにはIターンがあるということだな。2023/02/01
となりのトウシロウ
99
山間の小さな集落・蓑石は住む者がいなくなり無人になった。そんな蓑石にIターン移住者を集め再生するプロジェクトを進めるのが南はかま市甦り課。メンバーは主人公の万願寺、昼行灯のような西野課長、入社2年目学生のような観山の3人。集まった住民達が引き起こすトラブルや事件がミステリーとして描かれるがそれが何とも浅く薄い。ミステリーではない自治体職員の奮闘記ものかと思ったら、最後にオチが。少ない住民が暮らす集落維持コストが自治体の予算を圧迫する現状。中では本当にこんなプロジェクトが進められているかもしれませんね。2025/04/26
小説を最初に書いた人にありがとう
76
移住支援を行う地方市役所職員の万願寺が主人公のお仕事小説かと思いきや、無人となった旧簑石村へと移住してくる癖のある家族たちの悲喜劇のような問題をミステリーの解決的な要素も持ちながら進んでいく。米澤作品らしく、トリックだけでない捻りの効いた解決を楽しみながらも、根底にある違和感や不穏なものが増殖されていく。そして驚きのラストへ。移住を考えている自分としては躊躇いも生まれつつ読了2022/10/08
annzuhime
74
無人となった村に人を呼ぶ。市が推進するIターン事業。事業を担う甦り課で務める万願寺。やってきた10世帯の移住者。しかしトラブルが続出し、移住者たちは村を去る。万願寺さん真面目さも良いけど、課長のキャラが好きだなぁ。自治体の問題がリアル。田舎への移住は憧れだけでは無理よ。トラブルが起きて解決するはずが、なぜかザワザワする。そして最終章。このザワつきは解消しないのかな。2022/10/07
星野流人
72
住民のいなくなった寒村を蘇らせるIターンプロジェクトにまつわるミステリ。簑石にやってきた住人たちは悪い意味で個性があり、様々なトラブルが起こる一方で、市役所側も何を要望されても予算が無くて何もできない辺りが妙にリアル。解決してもなんとも後味の悪いエピソードが多い中、どうにか簑石を良くしようと奔走する万願寺の語りは読みやすくてよかったです。人懐っこい後輩の観山がかわいくて、物語の清涼剤になっていました。そんなまさかなオチが待つ「浅い池」と、微笑ましいエピソードが一気に崩壊する「重い本」が個人的に好きでした2022/09/23