出版社内容情報
その愛の正体は依存なのか、束縛なのか、嫉妬なのか──? 「母と娘」という永遠の闇を鮮烈に映し出す傑作の数々を新たに編み直す。
内容説明
その愛の正体は依存なのか、束縛なのか、嫉妬なのか。母子関係の闇を鮮烈に描き出してきた天才・山岸凉子。ラストで日常世界が反転する恐ろしい傑作「夜叉御前」、美しい女優と肥った娘の隠された愛憎を露わにする「鏡よ鏡…」、優等生の双子の兄を溺愛する母の姿を妹の視点で見つめる表題作など五作品を収録。
著者等紹介
山岸凉子[ヤマギシリョウコ]
9月24日、北海道札幌市生まれ。1969年「レフトアンドライト」でデビュー。後に「花の24年組」と言われる漫画家のひとりとなる。1983年「日出処の天子」で第7回講談社漫画賞、2007年「舞姫テレプシコーラ」で第11回手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞。代表作に「アラベスク」「妖精王」「ヤマトタケル」「青春(あお)の時代」「レベレーション」など多数。幅広い作風であらゆる世代から絶大な人気を誇る少女漫画界のレジェンド(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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akiᵕ̈
45
80年代〜90年代にかけての表題作を含んだ、五作品からなる傑作選。装丁も山岸さんらしい繊細な描写にゾクっとする。意図的かどうか母親が投げかける言葉に、子どもはじわじわと呪縛をかけられているという様が恐ろしい。無意識な両親の支配や自己暗示で、人はいとも簡単に自分を見失ってしまう。昭和の香り漂う中での家族という闇は、そーっと足音を立てずに後ろからついてこられているような、まとわりつく恐怖を感じる。2022/04/24
がらくたどん
43
家父長制の呪縛と支配を描いた山岸涼子80年代~90年代の短編漫画5作品。タイトルは「鬼子母神」だし帯の惹句は「母という呪縛は~」と始まるので子供を縛る母の狂気がテーマかなと思わせられ確かに全編そんな感じで始まるのだが読むほどに描かれるのは父も母も少年も少女も何者かに縛られ縛る「男女平等」の支配・被支配の構図。では、呪縛の主は何者か?見えてくるのは被支配を安心で心地よく解説の角田氏の言葉を借りれば「楽で、甘やか」と感じる男女の共同作業による細かく透明なベールの存在。男女ともに支配されない快感を再確認できる。2022/04/24
空のかなた
27
滲み出る邪悪さの短編集。流石、山岸涼子さんの作品。怨霊とか妖怪ではなく、人の心の恨み、執着の恐ろしさを描き出す。しかも何故か「日出処の天子」を思い出す。天女の化身ような美貌でありながら、嫉妬に抗えず毛人の想い人の殺害に突き進む聖徳太子。本編では「鏡よ鏡」が怖かった。美貌の女優を母に持つ娘(子豚ちゃん)が、毒母の呪縛を振り切ったはずがなのに、いつの間にか自分が母と瓜二つの美への執着の闇に飲み込まれる。そして気持ちが離れてしまった夫を繋ぎとめるためだけに息子を喘息にする母親の話「コスモス」も実際に有りそう。2022/06/10
阿部義彦
24
文春文庫より凉子さんの自選作品集です。最初の「夜叉御前」は一読した所、よく意味が分からなかったんですが、何回も読み直して、やっと合点がいって、その残酷な恐ろしさに腰が抜けました。これって○が○を◇した話では!これだから少女漫画を読んでた女には男は勝てませんわ。次の「鏡よ鏡」もナルシストの母と、その娘の鏡写しの物語。「コスモス」は一言で言えば『子は親を救うために病気になる』そんな題名の本もありますよね。「ブルーロージス」これだけ救いがある成長譚。ラスト表題作は、マザコン息子と固着した母性の愚かな結末。恐怖。2022/05/04
ベル@bell-zou
23
妬みや怖れは愛情を歪め毒になる。新居に棲む鬼の正体が悍ましく恐ろしい「夜叉御前」、失恋から得たものへの気付き「ブルーロージス」が特に印象的。82年~93年発表の山岸涼子自選作品集。男性優位がまだ色濃い時代、顔も存在感もない夫に執着する妻、無条件に母を慕う子供らの、その 支配の構図が鋭い。解説は角田光代→https://books.bunshun.jp/articles/-/7081?s=092022/11/26