出版社内容情報
怠け者で口八丁の男が天下の覇者に――漢の始祖・劉邦の勃興から崩御後までを、敵、臣下、息子、学者など同時代人の目で描く連作集。
内容説明
「王になりたいのさ」。秦王朝末期、小家の青年・劉邦は幼なじみに嘯く。農作業を手伝わず、口八丁の男はやがて挙兵し、たびたび敗れながら、ついに垓下の戦いで項羽を下す。漢王朝の始祖を、彼と共に動く影のように生きた五人―敵、味方、臣下、息子、儒者ら同時代人の目で描く長篇のごとき読みごたえの連作短篇集。
著者等紹介
宮城谷昌光[ミヤギタニマサミツ]
昭和20(1945)年、蒲郡市に生まれる。早稲田大学文学部卒。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事、創作をはじめる。その後帰郷、ながい空白ののち「王家の風日」を完成。平成3年、「天空の舟」で新田次郎文学賞、「夏姫春秋」で直木賞、「重耳」で平成5年度芸術選奨文部大臣賞、「子産」で平成13年の吉川英治文学賞を受賞。平成16年に菊池寛賞を受賞、平成18年に紫綬褒章を受章。「劉邦」で平成27年度毎日芸術賞を受賞。平成28年に旭日小綬章を受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
布遊
28
宮城谷さんの講演を聴きに行く前にと手に取った本。やはり、中国の歴史に疎いから、なかなかページが進まない。人の名前も覚えられないので、メモしながら読む。時々出てくる四文字熟語に何故かホッとする。ストーリーは面白く、慣れればハマると思う。宮城谷さんの講演は、地元愛に溢れた内容だった。想像していたよりも堅苦しくなく面白かった。2024/12/04
Tanaka9999
11
2022年新装版第1刷、文藝春秋の文春文庫、5編。劉邦に関係する人物の短編集。『石径の果て』先頭と最後がつながっている。この人物の場合、劉邦が皇帝になった後の描写がなかなか面白い。『風の消長』主人公の感情が少しわかりずらいかも。『逃げる』逃亡中の文章のリズムが好きなリズムである。そして最後までそのリズムが崩れない。 やはり、この作者については短編の方が好きである。2024/01/23
shimashimaon
7
漢の高祖劉邦の関連人物に纏わる短編五篇です。私にとっては初の著者です。春秋戦国時代に関する作品も読もうと決めていますが、司馬遼太郎『項羽と劉邦』読了後だったので、著者の割と初期の作品である本書を手に取りました。登場人物の主観を通して描かれる秦の滅亡・楚漢戦争であるという点、永井路子『炎環』を想起させます。その人物とは、季布、盧綰、陸賈、劉肥、叔孫通。特に漢の朝儀をつくったという叔孫通の物語が良かった。国家を治めるのに法では足りない。宇宙の原理たる礼が欠けてはならないということを深く感じ取ったつもりです。2022/04/19
coldsurgeon
6
中国古代、秦から前漢に移行する時代の主要な人物と言えば、項羽と劉邦であるが、彼らを取り巻く人々を描いた短編集だ。心の内側がよく描かれ、自分の心をそこに寄り添わせることができる。だからこそ、作中人物と同じ目線で、その時代の風景を観れる気がした。2022/02/06
feodor
5
楚漢戦争から漢初の人物たちの短編集。「逃げる」は季布。「長城のかげ」は盧綰。「石径の果て」は陸買。「風の消長」は劉邦の息子である劉肥。劉肥は劉邦の最初の妻曹氏の子で、斉王となる。劉肥を描きつつ、曹参や呂氏なども描いている短編。そして最後が「満天の星」。儒者として劉邦に仕え、漢王朝の制度を整えた叔孫通を描く。さまざまな人々の像を通じて、中でも劉邦が浮かび上がってくるおもしろい短編集。2023/08/13