出版社内容情報
あのことばだけは消え去らない。
その痛みだけは忘れられなかった。
15歳で早逝したダウン症の兄との思い出、ヒトラー・ユーゲントの来日……大家族二世代の物語はこの国の未来を照射する。絶筆長編。
内容説明
ダウン症の兄は15歳であっけなく他界してしまった。絵美子が折に触れて考えるのは、兄のこと、幼い頃に囁かれたあの言葉、そしておじ・おばたちが決して詳しく語ろうとしない、ヒトラー・ユーゲント来日の日の事―。大家族の物語はこの国の未来を照射する。逝去直前まで推敲を重ねた津島文学の到達点。
著者等紹介
津島佑子[ツシマユウコ]
1947年、東京都生まれ。白百合女子大学卒。78年『寵児』で第17回女流文学賞、83年「黙市」で第10回川端康成文学賞、87年『夜の光に追われて』で第38回読売文学賞、98年『火の山―山猿記』で第34回谷崎潤一郎賞、第51回野間文芸賞、2005年『ナラ・レポート』で芸術選奨文部科学大臣賞、第15回紫式部文学賞、12年『黄金の夢の歌』で第53回毎日芸術賞を受賞。2016年2月18日、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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satooko
1
著者の遺作、亡くなる直前まで手を入れていたらしいので、完全版ではないのかもしれないが、その香りが漂う作品に思える。若いときから読んでいた、熱心ではないがときどきは新刊も手にしていた作家がだんだんいなくなるのは、さみしい。2022/03/15
ポポ
0
さすが津島佑子。自分の意識より、一段深いところをついてくる…。自分がうっすらと感じてはいるが、気がつかないふりをしている感情、無いものとしている感情、を実に明解に表面化してくる。それが苦でもあり、快でもある…。2022/12/28
nkwada
0
夭折したダウン症の兄がいる絵美子が、いとこから「フテキカクシャ」と囁かれた思い出、、ヒトラーユーゲントを歓待したというおじおばたちの後悔とか、差別をテーマとして扱った小説。登場人物の関係をつかむのに手間取った。津島佑子にとって最後の作品とのこと。2022/05/26