出版社内容情報
一見幸せそうに見える恋人たちにも、ふとした瞬間に訪れる微かな違和感や、不信感。「角田光代の隠れた傑作」といわれる恋愛短篇集。
内容説明
ハッピーエンドから始まる恋人たちの平凡な日常。一見幸せそうに見える二人に、ふとした瞬間に訪れる微かな違和感や不信感。あたたかな太陽の光が、突然暗い雲にさえぎられるように―。買い物依存症、風呂嫌い、万引き常習犯、迷信好き…。不完全な恋人たちの、キュートでちょっと毒のある11のラブストーリー。
著者等紹介
角田光代[カクタミツヨ]
1967年、神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。90年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞、96年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、98年『ぼくはきみのおにいさん』で坪田譲治文学賞、『キッドナップ・ツアー』で99年産経児童出版文化賞フジテレビ賞、2000年路傍の石文学賞を受賞。03年『空中庭園』で婦人公論文芸賞、05年『対岸の彼女』で直木賞、06年「ロック母」で川端康成文学賞、07年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞、11年『ツリーハウス』で伊藤整文学賞、12年『かなたの子』で泉鏡花文学賞、同年『紙の月』で柴田錬三郎賞、14年『私のなかの彼女』で河合隼雄物語賞を受賞。21年、5年の歳月をかけて訳した『源氏物語 上・中・下』で読売文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さてさて
158
11組の恋人たちの関係性の中に芽生えた『違和感』に光を当てていくこの作品。そこには、付き合いはじめた時には見えなかった相手の隠された姿が、もしくは付き合いはじめた時には意識が低かった事ごとが、二人の関係性を維持していく中で大きな『違和感』となっていく様が丁寧に描かれていました。二人の関係性の中に見え隠れする『太陽』と『毒ぐも』のせめぎ合いの絶妙さを見るこの作品。人と人とが長く付き合うことの意味を感じもするこの作品。角田光代さんならではの着眼点の面白さに、改めて作品作りの上手さを垣間見た、そんな作品でした。2023/09/19
aoringo
90
傍からみたら普通のカップル。でも相手は盗癖だったり、アル中だったり、一癖持っていた人達だった。お風呂に入らないから臭い、食事がお菓子だけとかはきついなと思うけど、もし付き合う前に分かっていたら恋人になっていただろうか。恋愛初期だったら気にならないかも知れない、でもこれはそれから数年後の話。相手に苛立ちながらも中々別れない登場人物に読んでいて付き合うって何だろうと考えてしまった。2023/09/11
misa*
70
恋人同士の生活の中での出来事を綴ってるんだけど、最初はおもしろく感じてた相手のある部分が、時として怒りや悲しみに変化してゆく。恋愛してく中で一度は経験するだろうお互いの違いが、くっきりと形をあらわにしていく様は、角田さんならではの描写で書かれていてスラスラと読めちゃう。昔自分も恋人の許せない言動だったり癖があって、どんなに好きでいてもその一部分を見る度に音を立てて歪みが生まれていた。結局は一番嫌いな人になって別れた。そういうヒリヒリした作品が集まった短編だった。2021/07/27
雪
64
角田さんの恋愛小説はリアルで、飾りがなくて、心の奥底の痛いところをグイグイ突いてくる。本作品もそんな一冊だった。どこにでもいるような11組のカップルのお話。付き合い始めた当初は気にならなかった相手のある部分が、時を重ねるごとにどうしても許せなくなっていく。自分だったらどれが一番無理かな・・なんて考えながら読んだ。どれも甲乙つけがたい(笑)2004年の作品だけれど、全く古さは感じなかった。2021/08/30
みつにゃん
51
11組のカップルの姿の話。どちらかが『極端な人』。お風呂に入らない、万引き常習犯、買い物依存症…etc 好きだけれども、どうしても許せない部分があり、その許せなくなる側の葛藤に共感する。一緒に住むとどうしても出てくる部分。わかりやすすぎて既視感…の箇所あり。本文の中で2人の関係をドレッシングみたいだと例える部分がある。油と酢のようにくっきり独立した両者には、それ相応の気負いと行為が要る。かき混ぜ、譲歩も変更も楽しかったけど、放置すればすぐに分離する。…表現が秀逸。みんなあるよね…とどこかホッとして読了。2021/07/25