出版社内容情報
容姿や年齢、結婚、セックス、お金とプライド…本音の見えづらい関心事を正しい姿という共通のモチーフで鮮やかに切り取る短編集。
内容説明
不倫に悩む親友にわたしがしたこと(「温室の友情」)、同じマンションに住む女に惹きつけられる男(「偽物のセックス」)、残り少ない日を過ごす夫婦の姿(「幸福な離婚」)―。偏見や差別、セックス、結婚、プライド、老いなど、口にせずとも誰もが気になる最大の関心事を、正しさをモチーフに鮮やかに描く短編集。
著者等紹介
千早茜[チハヤアカネ]
1979年、北海道江別市生まれ。立命館大学文学部卒業。2008年、「魚」で第21回小説すばる新人賞受賞。受賞後「魚神」と改題。09年、『魚神』で第37回泉鏡花文学賞受賞。13年、『あとかた』で第20回島清恋愛文学賞受賞、第150回直木賞候補。14年、『男ともだち』で第151回直木賞候補、15年、同作で第36回吉川英治文学新人賞候補(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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じいじ
109
この作家の人物描写には、独特のものが感じられてとても好きである。世間には、むやみやたらとタチの悪い「先生」と呼ばれる輩がはびこっているようだ。国民の健康をあずかる医師は大方よしとして、政治家までもが「先生」と呼ばれるのは、いささか行き過ぎであり腹も立つが…。読み終えて、6篇の短篇にかぶされた「正しい女たち」のタイトルの「妙」が甦ってきた。2021/05/25
aoringo
84
女性の年齢、セックス、カースト、賞味期限。普段、口に出しづらい気になっていることを突かれたような気がした。私はもう気にする年齢ではなくなっているけど、年頃の女性だったらどう思うのか気になった。清廉潔白に生きているような自分も、本当はこんな側面を持っているのではないかと感じさせる背筋の冷える作品でした。でも面白かった!女性の内面を描くことが巧みな方だと再認識しました。2024/12/16
JKD
82
正しい人生であることが果たして正しいのか、そもそも正しいとはなにか、何気ない日常の会話や交流を通じて得られる結末は幸せなのか絶望か。いろんな感情が織り混ざり、微妙な感性の違いがその先の分かれ道を決定付ける。そんな哲学みたいな世界に引き込まれていくような感覚になりました。2021/07/16
まさきち
82
それぞれの女性が各々の信念に従い、色々な状況の下で生きていく姿を描いた短編集。各編の関わりが微妙にかいまみれたのも楽しみの一つでした。2021/06/05
tenori
80
千早茜さんの著作は女性好みかなと思うのですが、男性である私は男性にこそお薦めしたい作家さんのひとり。特にこの作品。濃淡あれど女性が持ち合わせる正しさと、そこから逸脱してしまうことの悩ましさを高校生時代の4人グループ目線で繋いだ連作短編。登場する男性陣(中でも腐った感じの)に自分を重ね合わせ読むべし。拒絶をしつつも、何かを教示するような強さと優しさ。男性は女性に踊らされ、甘えている、そして育てられている。そんなことを感じさせられる一冊。桐野夏生さんの解説も秀逸。2022/11/19