内容説明
香也の婚約者となった清四郎は、吉良の仇を討つべく江戸に向かうが、将軍綱吉・柳沢吉保と次期将軍家宣との権力闘争に巻き込まれてしまう。清四郎の危機を救うため、蔵人も江戸に向かう。夫婦、親子、友との清冽な絆を描いた葉室麟最後の長編小説にして、蔵人と咲弥夫婦の三部作が十年の歳月をかけ遂に完結。
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951年北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年『乾山晩愁』で第29回歴史文学賞を受賞し作家デビュー。2007年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞、2012年『蜩ノ記』で第146回直木賞、2016年『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞を受賞。2017年12月23日、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
49
江戸の権力闘争に巻き込まれる清四郎。蔵人も江戸に危機を救うために向かうのを見ると、清四郎のことを認めているのだなと思います。夫婦、親子、友の絆が美しい。これが最後の長編だと思うと感慨深いです。2023/02/15
うさこ@タッタカタ
9
よかった。このおわり方で 九州へ逃れる時女に変装すれば良いとやいのやいの言われて、その後姿を消した清四郎。そんなに嫌だった?みたいな受け取り方一瞬してしまった。な、わけない。2022/02/16
たけちゃん
6
雨宮蔵人三部作を読了し、深い感慨に包まれている。本作が葉室麟さんの遺作であると知り、その重みを改めて感じた。物語の終盤、雨宮蔵人が己の信念と誇りを守り抜きながらも、運命に翻弄される姿には、涙を抑えることができなかった。彼の生き方には「真の漢」としての理想が詰まっていて、その背中を追いたくなるような気持ちにさせられる。「雨宮蔵人永遠なれ」という言葉に深く共感すると同時に、葉室麟さんの作家としての偉大さを改めて実感した一冊だった。2025/04/26
むらよし
3
お互いを想いどこまでも信じ合う二人。天地に仕える蔵人はもとより咲弥の肚の据わりっぷりに感服。ほれっくす。香也と清四郎、千代と磯貝ともに幸せに。本作で完結とは寂しくもあるがこの作品に出会えて良かった。葉室麟さんへ感謝2024/09/24
G❗️襄
3
涙無しに本を閉じられない。感動に涙、今は亡き葉室氏に涙、そして巡り会えた喜びに涙、三重涙に胸が締めつけられる。姿は歴史時代小説、その実、究極の人間愛。武士道を飛び越え、人の道へ昇華させ、夫は、妻は、人は、かくありなん。今の世と近世を対峙させ、私達への問い掛けの矢が撃ち込まれる。葉室麟の真の愛が精緻にして骨太に、死の淵を彷徨いながらも魂心の言葉で囁やかれていた。正に命懸けの遺作となった。もうこの先新たな作品は無い。雨宮蔵人三部作に葉室麟の影を偲ぶしかない。〈 高砂や相生の松老いて未だ 影ぞ恋しき影を並べん〉2022/12/31