出版社内容情報
プライド高く情熱的に生きてきた、もと編集者の澤。重い病で余命わずかだと知り、ある死に方を決意する――深く問いかける傑作長編。
内容説明
大手出版社を定年退職後、小説講座の講師をしていた69歳の澤登志夫。がんで余命いくばくもないことを知り、いつからか準備を始めていたある計画を胸にひとり冬の信州へ向かう―澤を崇拝する教え子・26歳の宮島樹里は自らの昏い過去と向き合い、澤から何を受け取るのか。尊厳死を描いた傑作長編。
著者等紹介
小池真理子[コイケマリコ]
1952年、東京生まれ。成蹊大学文学部卒業。89年、「妻の女友達」で日本推理作家協会賞(短編部門)受賞。96年『恋』で第114回直木賞、98年『欲望』で島清恋愛文学賞、2006年『虹の彼方』で柴田錬三郎賞、12年『無花果の森』で芸術選奨文部科学大臣賞、13年『沈黙のひと』で吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あすなろ
89
久しぶりの小池氏作品。尊厳死がテーマ。自分らしく末期迄ありたく、自分らしく生きれ無くなれば自ずからその生を断ちたい。その為には…。そして、その終末へ向かう生の中で出逢ってしまった若き女性。その女性についても描く。僕も時折考える事がある。己が己らしく過ごせなくなったら自ら命を断つか否か。そんな事も含め、小池氏らしい描写に彩られながらも考えさせられる文学的作品。また、読書中の頭の片隅には、小池氏の夫である故藤田氏の事も浮かんできてしまうのである。2021/04/04
ふう
89
迷いながら手に取った本。新聞の土曜版で「月夜の森の梟」という連載文を読み、夫を見送った作者の思いに心打たれ、どんな小説を書くのだろうと怖々読み始めました。フィクションなので、もちろん夫の死を描いたものではないでしょうし、読んでいる間は作品のおもしろさにそんなことは忘れるほどでした。末期の癌に苦しむ男性。その苦しさを想像することは難しいけど、自分の死を演出することぐらいは許されてもいいのかもしれないと考えさせられる作品でした。2021/03/28
ゆみねこ
83
とても読み応えのある1冊でした。末期ガンで余命いくばくもない69歳の澤登志夫は自らの最期をとある計画に添って成し遂げるため、一人で冬の信州へ向かう。澤を慕う教え子・宮島樹里の人生も絡め、考えさせられました。2021/05/10
Shoji
45
これぞ小池真理子さんですね。大人の男と女の沙汰、そして死にまつわる物語。大人の男と女のお話を書かせたら天下一品ですね。面白かったです。そして何より、死にまつわるお話。「終末」というものについて、考えさせられる一冊でした。2021/03/30
カブ
44
定年退職後、小説講座の講師をしていた澤登志夫69歳。離婚して娘とも疎遠となり、孤独な日々。ガンで余命いくばくもないことを知ると、自分の最後にある計画を考え実行する。小説講座の生徒だった樹里が何とも気持ちが悪い。自分はいつ、どのように死ぬのだろう。2021/05/21