出版社内容情報
藤井聡太ブームに沸く将棋界。その裏で棋士の先崎さんは脳の病と闘っていた。その発症から回復までを大胆に綴った心揺さぶる手記。
内容説明
藤井フィーバーに沸く将棋界で、羽生世代の有名棋士の休場が突然発表された。様々な憶測が流れたが、その人、先崎九段はうつ病と闘っていた。孤独の苦しみ、将棋が指せなくなるという恐怖、そして復帰への焦り…。エッセイの名手でもある著者が発症から回復までを淡々と細やかに綴った手記に心揺さぶられる。
著者等紹介
先崎学[センザキマナブ]
1970年、青森県生まれ。81年、小学5年のときに米長邦雄永世棋聖門下で奨励会入会。87年四段になりプロデビュー。91年、第40回NHK杯戦で同い年の羽生善治を準決勝で破り、棋戦初優勝。棋戦優勝2回。A級在位2期。2014年九段に。17年7月にうつ病を発症し、1年間の闘病を経て、18年6月、順位戦で復帰を果たす(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
291
「(うつ病は)必ず治ります」お兄さんから送られて来たLINEのメッセージ。情報量最小が最適なんでしょうね。うつは脳の病。誰でもなり得る怖い病気のひとつですよ。うつを患って休場&療養。そして病状が回復して来て。復帰する直前位に当事者が書いた事に、意義高くなっているのかと。お兄さんが、精神科の医師である事が幸運でしたね。奥様も偉い。散歩大切。“風の音や花の香り、色、そういった大自然ほどうつを治す力で、足で一歩一歩それらのエネルギーを取り込むんだ!” うつの偏見は無くならないかもですけれど、情報の共有は大事。2024/03/03
tomi
36
雑誌コラムや「3月のライオン」の監修でも知られる先崎九段のうつ病闘病記。私はうつ状態なら度々なるが、うつ病に罹患したことはない。改めてうつ病は怖ろしい病気だと考えさせられた。体が鉛のように重い。好きな読書もできず、4コマ漫画の「コボちゃん」を読むのがやっと。そして詰め将棋も一問も解けなくなる… 駅のホームに行くと吸い込まれるように飛び込みそうになる。「うつ病は死にたがる病」だと言う。知人や有名人が自殺をすると原因や思いを推測しようとするが、うつ病患者の自殺は実際には病死なのだと思う。2021/11/20
りー
29
一年で復帰、というのは驚異的なスピードだと思います。周囲がとにかく優しい。著者が、それだけのことを周囲の方にしてきたのだと感じました。個人的には「感性が戻らない」というのに同感。病気前に呼吸と同じようにできていたことが、どうやってやっていたのか分からなくなったまま。お兄さんの一言一言が沁みました。「うつは必ず直る病気なんだ」「まともな精神科医なら自殺という言葉を聞いただけでも身の毛が逆立つものなんだ。」素敵なお兄さんだなぁ。色々な場所で、もがいている人がいる。治ることを信じて。2020/09/27
しゅん
27
佐藤優が解説で書いている通りだが、「精神科医というのは患者を自殺させないというためだけにいるんだ」という先崎学の兄の言葉が重要に思う。「いまだに心の病気といれている。うつ病は完全に脳の病気なのに」の発言も同様に重い。「うつ気味」とは異なり、「うつ病」は死に向かおうとする脳のバグのような現象であることが、うつ病になったプロ棋士の文章によって具体的に描かれている。「書き始めたら書く内容がなくて困った」と先崎氏は書いているが、つまり「うつ病」に心理的な原因もなく、ドラマティックな回復でもないということだろう。2023/04/20
Baro
24
先崎先生は、「3月のライオン」で知りました。さらに、この本もライオンの新刊で知りました。うつ病は「心の風邪」って言われることもあるけれど、うつと診断されたことがある身としては、先崎先生のお兄さん(精神科医)の「心の病気ではなく脳の病気」という言葉がすっごく沁みました。何はともあれ、先崎学の復活を心から喜びたいです。2023/09/09