内容説明
退廃に彩られた十九世紀末のロンドン。病弱な青年だったビアズリーはイギリスの代表的作家で男色家のワイルドに見いだされ、『サロメ』の挿絵で一躍有名画家になった。二人の禁断の関係はビアズリーの姉やワイルドの同性の恋人を巻き込み、四つ巴の愛憎関係に…。美術史の驚くべき謎に迫る傑作長編ミステリー。
著者等紹介
原田マハ[ハラダマハ]
1962年、東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。商社勤務などを経て独立、フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年、『カフーを待ちわびて』で日本ラブストーリー大賞を受賞し、翌年作家デビュー。12年、『楽園のカンヴァス』で山本周五郎賞、17年、『リーチ先生』で新田次郎文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
333
途中からまるでオペラを観劇している様な錯覚に襲われた。圧倒的な声量で歌い上げられる怨嗟と絶望。世紀末ヨーロッパで一世を風靡した天才作家オスカー・ワイルド。彼の戯曲に悪魔的な挿画を提供した夭折の天才画家オーブリー・ビアズリー。幼き頃から病弱だった弟オーブリーの理解者で、献身的に支えその才を世に送り出す為なら身を捧げる事さえ厭わぬ美しく優しき姉メイベル。やがて愛は妬みとなり彼女を妖艶で悪魔的な女へと変貌させる。まるでその戯曲の主人公の様に!その戯曲のタイトルは【サロメ】哀しく美しい恋の話…破滅的な程の‼️🙇2020/08/13
bunmei
247
オスカーワイルドのサロメの内容は知らなくても、オーブリーが黒ペンで描いた生首に口づけする女の挿絵は、知る人も多いと思います。オーブリーの作品が今も私達に語り継がれるのは、やはり、サロメの挿絵を飾ったことが大きく影響しているでしょう。そして、オスカーとオーブリーの出会いこそが、芸術の相互作用となって昇華し、25歳の若さで儚く散ったオーブリーであるからこそ、伝説的な生涯が芸術性を高めていると思います。本作は、オーブリーの姉メイビルの弟に対する愛情目線で進行し、次第にサロメに擬えた愛憎劇へと導いていきます、 2020/05/21
hit4papa
170
オスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」に挿絵をかいたオーブリー・ビアズリーの生涯を描いた作品。実は「サロメ」の英語版を翻訳したのは、ワイルドの愛人ダグラス卿ではなかった、という現代の問題提起から、本作品は始まります。現代と往時が並行してストーリーに厚みを出すのは、著者のアート小説に良く見られる手法ですが、本作品は不発に終わったようです。とはいえ、オーブリーの創作への鬼気迫る執念と、姉メイベルの弟を思いつつも女優を目指す野心が絡み合う読み応えのある作品です。イラストから物語を紡ぎ出す著者の感性には脱帽です。2023/02/26
さてさて
165
「サロメ」は、現代でもその内容に強い衝撃を持って受け止めざるをえない時代を超越した作品だと思います。そして、そんな「サロメ」を生み出したオーブリーの『描くことへの激しい希求。新しい表現を見出すことへの欲望。自分にしか創りえないものに注ぎ込む情熱』を見事に描き出したこの作品。 サロメの化身かと思われるかのようなオーブリーの姉・メイベルの生き様が、読後も不気味に頭の中で踊り続ける、そんな印象も持ったとてもインパクトの強い、濃い、そして深い作品でした。 2020/09/30
のり
152
19世紀末に画家の新星が誕生した。「オーブリー・ビアズリー」。病弱な彼を支えた姉で女優の「メイベル」。彼の才能にいち早く気づき、誰よりも成功を願った。転機は戯曲作家の第一人者の「オスカー・ワイルド」との出会い。サロメを出版するにあたり挿絵を請負う。内容も二人の関係も禁断の渦にのみ込まれる。姉のメイベルも何度も悪魔に魂を売る行動に出る。愛憎入り乱れ幸せを手に入れた者は…オーブリーが最後に銀の皿の上の首を願ったのはワイルドか?メイベルの首か?2020/11/08