出版社内容情報
津波のリアルタイム観測――。地震研究所を辞めた準平は、旧知の武智に誘われ、個性豊かな研究者とこの無謀な計画の実現に走り出す!
内容説明
「津波監視システムの実現に手を貸して欲しい」。東日本大震災後、地震研究所を辞めた準平は、学界で異端視される武智に誘われる。海洋工学や観測機器などのエキスパートだが個性が強すぎて組織に馴染めない“はみ出し者”たちと、準平は前人未到のプロジェクトに挑むが…。研究者の情熱ほとばしる科学エンタメ!
著者等紹介
伊与原新[イヨハラシン]
1972年大阪生れ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻。博士課程修了後、大学勤務を経て、2010年、『お台場アイランドベイビー』で横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー。19年、『月まで三キロ』で新田次郎文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
345
地震によって引き起こされる津波の予知にかけたチームの物語。メンバーはそれぞれ出自も、現在置かれている状況もバラバラの6人。いわば寄せ集め集団である。そして、この6人はいたって個性的だ。その中で最も地味な準平を主軸に据えるところが伊与原新の作家的な上手さだ。そんな彼らに共通するのは(瀬島はやや例外)、あの3.11東日本大震災の時に何もできなかったことへの悔恨である。ただ、その清算の仕方はこれまたそれぞれに個性的であり、それが物語を輻輳的に構成してゆく。展開はいたってスリリング。⇒2025/04/22
パトラッシュ
180
東日本大震災の津波被害に打ちのめされた科学者や技術者が集まり、本当に役立つ津波監視システムの開発に力を注ぐドラマ。科学界のムラ社会に馴染めないはみ出し者が「想定外などと言い訳しない」を合言葉に、妨害や困難を乗り越え実現してしまう展開は熱く激しい。本当に科学を発展させるのは、組織でも権威でもなく個人の情熱なのだと訴えてくる。あと瀬島が開発した無人水中航走体について、軍事利用を狙う日米当局の介入が尻切れトンボなのは惜しかった。本物の悪が出てこないので、中ロも加わった冷酷非情なスパイ小説的展開も期待したのだが。2025/05/28
kk
76
主人公は、あの震災で大きな挫折を経験し、自分の生き方を見失ってしまった地質学研究者。自責と懊悩の日々を送っていた彼が、それぞれの事情を抱えた仲間と共に、津波観測・警報のための新システムの開発プロジェクトに参加することに。さまざまな圧力の中、それでも多くの人たちと出会い、助けられて、彼らはよろめきながら前に進もうとするのです。読み手を選ぶかもしれませんが、登場人物のキャラはしっかり立っているし、読後感もとても良かったです。「八丈島の海も、いつまでも黒くはないさ」。カタルシス!2020/04/19
五右衛門
72
読了。このタイミングで本当にドキッとしました。何せちょうど作中の海底火山が噴火して出来上がった明神新島の溶岩崖が崩落し、その影響で八丈島等への津波のシーンを読んでいるとき現実の地震が発生し夜中にドキドキが止まりませんでした。やはり相当な被害が報告されています。本当にお悔やみ申し上げます。本の感想ですが…憎い津波での辛い経験を背負っている寄せ集め(個人の能力は素晴らしい)メンバーが愛おしくなるほど全員頑張っています。お仕事小説としても良く出来てます。このタイミングで読めて良かったです。2022/03/17
papapapapal
56
先の大津波により、自信やプライドなど多くのものを打ち砕かれた地震学者たち。各所のはみ出し者が集い、津波から人々を守るという使命感のみに突き動かされて「津波監視システム」を作り上げる物語。専門用語がいっぱいで思い描くのも難しいけど…本筋は「ひとりずつ仲間が増え、次々に現れる大きな壁を乗り越えながら、ひたすら前に進む」という王道ストーリー、分かりやすくて熱くて、ハラハラドキドキ面白い! 後悔や失敗から何を学び取るか、どう生かすか。…立ち止まってなどいられない、これぞ理系エンタメ小説!!2021/06/30