出版社内容情報
犯罪者の家族が殺される事件が起きた。現場に残された「ネメシス」の謎とは? 『テミスの剣』の渡瀬刑事が追う社会派ミステリー。
内容説明
死刑判決を免れた殺人犯たちの家族が、次々に殺される事件が起きた―。現場に残されていたのは、ギリシア神話に登場する「義憤」の女神を意味する「ネメシス」という血文字。事件は遺族による加害者家族への復讐か、それとも司法に対する挑戦か?司法システムと死刑制度を正面から取り上げた社会派ミステリ。
著者等紹介
中山七里[ナカヤマシチリ]
1961(昭和36)年、岐阜県生まれ。会社員生活のかたわら、2009年、『さよならドビュッシー』で、第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、翌年デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
イアン
187
★★★★★★★☆☆☆死刑存廃論を扱った中山七里の社会派ミステリ。重大事件の加害者家族が相次いで殺され、現場から〝ネメシス〟の血文字が発見される。それは死刑相当の罪を犯しながら死刑を免れた犯人への復讐か、それとも被害者感情を蔑ろにする現代の司法制度に対する挑戦状なのか。身内を喪う痛みを知る判事が「温情判決」を繰り返す理由とは。死刑制度について深く考えさせられるが、それでも私は死刑廃止を前提とした欧米の司法制度が先進的だとは思えなかった。『テミスの剣』での悔恨を胸に己を信じて突き抜ける渡瀬の渋さが際立つ作品。2023/06/17
hit4papa
157
裁判で死刑を免れた加害者の家族を殺害する謎の人物。現場にはネメシスの血文字が。遺族の復讐か、それとも正義を盾にした者の犯行か。犯人は警察、検察を翻弄し、第二の殺人を犯します。犯罪の加害者本人とその家族、被害者家族の、それぞれのその後を詳らにする過程はまるでドキュメンタリーです。フィクションでありながら怒りに駆られることもしばしば。「テミスの剣」の刑事が突き止めた犯人は、意外なあの人!しかし、本作品はそれだけで終わりません。途中のぽっかり浮いた二つのシーンを伏線として回収し、ラストは驚くべき展開を見せます。2023/01/12
キムトモ
153
死刑制度の賛否をベースにネメシスの名を借りて復讐劇が始まり…あなたでしたか〜〜からの最終目的は…ってお話。考えさせられる内容で死刑制度の可否の国民投票が実施されたら自分はどちらに投票するだろうか〜〜と考えてしまいます…「テミスの剣」と連続で読み入ってしまいました…(ノ-_-)ノ~┻━┻渡瀬警部の弟子アンデッド古手川のお話へ〜〜2020/03/23
SJW
151
死刑判決を免れた殺人犯の家族が殺され、現場には「 ネメシス」(復讐の神)の血文字。死刑制度を社会問題として提起する中山さんの傑作司法ミステリー。殺人事件の被害者家族、加害者遺族、囚人、判事、検事、裁判判決に憤るネットの声を登場させて、各々の会話が小気味良く、また重かったりととても考えさせられた。どんでん返しもあり、単なる殺人事件ではないので、最後の顛末は予想外だった。2020/06/10
KAZOO
149
中山さんの最新の文庫でかなり問題意識を持たせてくれました。事件の加害者家族殺人事件、あるいは被害者問題、死刑制度等などです。それをほかの作品で出てくる刑事二人と検事が事件を解明していきます。温情判事といわれる人物も出てきてどうして死刑にしないのだろうと思わせたりします。最後の本当に中山さんの小説でおなじみのどんでん返しがあります。私も判事の意見に賛成で、刑務所での終身刑とほかの軽い刑の人は分けていくべきだと思いました。2020/02/27