出版社内容情報
無謀なインパール作戦において、烈第三十一師団長佐藤幸徳中将は、将兵の生命こそ至上であるとして抗命を企てた。異色の戦争記録。
内容説明
牟田口廉也中将が主導したインパール作戦において、烈31師団長佐藤幸徳中将は、将兵の生命こそ至上であるとして、補給なき最前線コヒマから独断で撤退し、師団長を解任される。戦後著された2人の回顧録と、豪雨と飢餓の悲惨な情況に陥った将兵たちの証言を通し、軍上層部の迷走と無責任を厳正に糺明した、執念の戦記文学。
目次
秘史の録音
牟田口文書
インド進攻
撤退の決意
アラカン越え
コヒマ戦線
独断命令
豪雨と飢えと
暗夜の対決
師団長解任
精神異常者
戦いの跡
人間の責任―あとがきにかえて
異常・無謀な作戦―文庫版あとがき
著者等紹介
高木俊朗[タカギトシロウ]
1908(明治41)~98(平成10)年。東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。松竹蒲田撮影所に入社。戦時中、陸軍報道班員として、中国、マレーシア、インドネシア、タイ、仏印、ビルマなどに従軍。従軍記者の経験をもとに、インパール作戦の悲惨さを明らかにして、軍指導部の無謀さを告発することを決意。49年無謀なインパール作戦の悲惨な戦闘を描いた最初の単行本『イムパール』を刊行(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoshida
90
高木俊朗氏のインパール作戦シリーズの第二作。烈師団の佐藤幸徳師団長が、牟田口廉也司令部の命令に反しコヒマから撤退したとした抗命事件について描く。牟田口廉也はイギリス軍士官よりの手紙により、自分の命令通りにすれば作戦は成功したとして自己弁護に走る。佐藤師団長の回顧録と生き残った兵士達の手記から実態を検証する。結局、牟田口の作戦は不可能だったことが明白となる。作戦起案当初は牟田口以外は作戦に賛同する者はいなかった。東條英機のインドへの政治的意図はあった。牟田口麾下の参謀達は何故作戦に賛同したのか疑問である。2021/08/02
みなみ
17
「インパール2」というタイトルだが、こちらのほうが読みやすく、作戦の発端から破綻まで概要を掴める内容。コヒマ戦線を戦った佐藤中将の撤退戦がメイン。NHKスペシャルで紹介された佐藤中将の「馬鹿の4乗」は物凄いインパクトがあったが、佐藤中将が遺した文章を見ると「無能」「愚劣」など強い罵倒の言葉が並ぶ。身内に喋ったとしても普通は文章に残さないと思うから、余程上層部のやりかたが腹にすえかねたのだと想像する。牟田口司令官がゴリ押しでインパール作戦を遂行し、そのため反対する人間を左遷していく様はえげつない。2021/03/06
Satoshi
14
インパール作戦での佐藤師団長の抗命(命令違反)事件について、記載している。司令官が作戦を立て、命令違反した部下は軍法会議にかける。それが軍隊ならば、無謀な作戦を立てて数万もの人命を失った責任は司令官にあるのではと思う。もやもやした読後感を残したまま本書は終わる。2021/03/16
Book Lover Mr.Garakuta
8
戦争の彼我夢想や大本営の妄想と無責任さに怒りを抱く。2019/09/14
A.I
4
偉い人間ほど責任を取らない。偉いもの同士かばいあう。あれほどの失敗をした責任者たちがその後昇進しぬくぬくと戦後も生き抜いたのは犠牲になった兵士たちが浮かばれない。しかし誰もコロコロしようとしないのは不思議だな。奴一人の犠牲で何千人もの命が救えたと思うが。 派閥や学閥によって間違ったエリート意識。腐った組織と上層部。まさに今の日本企業や官僚組織に受け継がれている2022/05/10