出版社内容情報
長く会津を統治した芦名家で当主が殺され、常陸の佐竹家より婿養子を迎える。家臣らの激しい軋轢に乗じて戦を仕掛けてくる伊達政宗。
内容説明
四百年の長きにわたり会津を治めながら、相次ぐ当主の早世で嫡流の男系が途絶えた芦名家。常陸の佐竹家より新たな当主として婿養子を迎えたものの、家中に軋轢が生じ、北からは伊達政宗の脅威が迫る。芦名家の行方は家臣筆頭の金上盛備の双肩にかかっており、ついに伊達との摺上原での最終決戦を迎えた。本屋が選ぶ時代小説大賞2017受賞!
著者等紹介
佐藤巖太郎[サトウガンタロウ]
1962年、福島県生まれ。中央大学法学部法律学科卒。2011年「夢幻の扉」で第91回オール讀物新人賞を受賞。2016年「啄木鳥」で第1回決戦!小説大賞を受賞。2017年にデビュー作『会津執権の栄誉』を上梓。この作品で「本屋が選ぶ時代小説大賞2017」に選ばれ、第157回直木賞候補にもなった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
192
長年、会津を治めてきた芦名家。その芦名家の晩年の連作短編集。滅びるときは得てして、一枚岩になってないもの。芦名家もそう。派閥化されて、足の引っ張り合い。そこに弱みがあり、敵に弱みを突っつかれるものだ。それは昔も今も変わらないと思う。摺上原の戦いがメインの人間模様。戦いのシーンは少ないものの、この人間模様は秀逸。金上盛備も苦労が絶えなかったんだろうな。自分も会津の歴史には詳しくないが、歴史に興味がなくても、詳しくなくても、お家騒動の人間模様を重きにおいてるので楽しめた。2021/03/10
如水
39
晩年の芦名家を描いた作品。相次ぐ当主の早世で嫡流がいなくなった後、佐竹家から養子を貰い当主とした。が…新(佐竹家)旧家臣の軋轢、何とか纏めようとする執政金上盛備、虎視眈々と狙う伊達政宗。この物語は『芦名家』を基本ベースにして謀反、報復、忠誠、憧憬、慢心を題材とした5編、芦名攻略後の政宗を描いた(題材は代償)1編として綴られてます。キーは『何処で歯車が狂ってしまったのか』ですかねぇ…当主が相次ぎ早世したのが原因だったのは勿論ですが、その後の対処が😰何故そう対処したか?の色々な理由がこの本から探せるかと。2020/01/16
ニックス
18
歴史とミステリーの要素を合わせもつ小説。面白かった。徐々に滅びに向かう芦名氏の歴史上事実を読み進める度に感じることができる。6つある各章は全て主人公が変わるが、それがリンクして物語が進む。芦名氏は鎌倉時代以来400年続く名家だが、豊臣秀吉が天下を統一する時代にあと一歩で滅亡する。内容としては帯にも書かれていたが、作者の言葉「組織が衰退していくなかで、取り残された人々がどういう考え方、動き方をするのか。そうして戸惑いながら生きていく人々の心を書きたかった。」これがにじみ出ている小説だった。星52020/10/02
TheWho
14
坂東八平氏の流れを汲み鎌倉期の筆頭御家人であった三浦氏の末裔で、奥州会津の名門大名である芦名氏の衰退から滅亡を語る六章の連作短編戦国絵巻。戦国末期奥州の火種は常に伊達政宗の脅威から生まれる。前読の近衛龍春「奥州戦国に相馬奔る」では、同じく奥州の名門相馬氏のしぶとさが際立っていたが、芦名氏の内部分裂をしていく様は、同じ名門でも衰退する家系の悲哀が際立った。ともあれ名前は有名だが、実態が知られていない芦名氏を垣間見た一冊です。2022/12/06
ようはん
11
久々の戦国物小説。伊達政宗の台頭と佐竹氏から養子を迎えた事に端を発する内紛で滅亡に近付きつつある会津蘆名氏が舞台で表題作の主人公である筆頭家老金上盛備を始めとした蘆名家臣達を主人公としたオムニバス短編形式の作品。各作品の主人公はそれぞれ身分は違うが滅びゆく蘆名家中にて各人が信念を得て独特の存在感を放っているのが心に響く。最後の短編はその蘆名を飲み込んだ政宗が主人公であるが、その政宗も秀吉という巨大な存在に飲み込まれるのが無常観を感じる。2019/09/01