出版社内容情報
重圧や病気を抱えながら多難な時代を乗り越え、いつも人の心に寄り添い続けた渡辺和子の自叙伝。自身が綴った貴重な随想集も収録。
内容説明
2・26事件で、陸軍大将の父が目の前で銃殺されたのは9歳の時。戦時下、母の猛反対を押し切り18歳で受洗。シスターとなった後、若くして大学の学長に抜擢されるも人間関係に悩み、うつ病や膠原病など試練の連続であった。しかし、自ら道を切り開き、生涯現役で教壇に立ち続けた。信仰と教育に身を捧げた波乱の人生の軌跡。
目次
序章 「二・二六事件」を訪ねて
第1部 戦渦の中で
第2部 敗戦を越えて
第3部 岡山の地で
第4部 よりよく生きる
折々の記―理事長として ノートルダム清心女子大学学報「ND Bulletin」より
著者等紹介
渡辺和子[ワタナベカズコ]
1927年北海道生まれ。教育総監・渡辺錠太郎の次女。聖心女子大学を経て、上智大学大学院修了。56年ナミュール・ノートルダム修道女会に入り、米国に派遣され、ボストン・カレッジ大学院で博士号を取得。帰国後、ノートルダム清心女子大学教授、同大学学長、ノートルダム清心学園理事長、日本カトリック学校連合会理事長を務めた。2016年12月30日逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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がらくたどん
55
226の本棚(追加分)著者の『置かれた場所で咲きなさい』という本が書店に平積みされた時にその最初の「置かれた場所」の過酷を想ってひどく動揺した記憶がある。ご存知の通り著者は226事件で殺害された陸軍教育総監の渡辺錠太郎氏の末の娘さんである。226勃発時9歳。決行部隊が自宅に侵入し父を殺害したのは両親と少女の寝室で彼女は父が機関銃で射殺される一部始終を目撃している。本書はもちろん宗教者として教師としての人生の総括が主題なのだが、被害者遺族の悲しみと赦しという226を語る「小さな声」が聴ける貴重な史料でもある2025/05/02
shincha
37
あとがきにもある様に、この作品は山陽新聞に連載されたものをまとめたものと、ノートルダム清心女子大学の学報を収めたものである。わずか9歳で目の前で父親を惨殺され、洗礼を受けた後も数々の困難にあわれたそんな渡辺和子さん。他の著作の中にも同じエピソードや、作者の考え方、生き方を示されているが、この作品を読んでから、他のものを読んだ方が、より理解が深まると思う。人間として生まれてきた以上、人間として、どのように生きるべきか…永遠の課題かと思うけど、本紙は、一縷の道筋を示してくれている作品だと思います。2023/11/28
アルピニア
35
心が萎えて立ち上がるのが辛い時、渡辺さんの本を読みたくなる。手を握り、深く穏やかな、しかしゆるぎのない眼差しで語りかけてくれるように感じる。その時々で胸に響く言葉が違うのも不思議だ。今回は「嫌なことを嫌だと嘆くだけでなく、その中で自分なりの目標を定め、それに向かって時間を丁寧に過ごすことが大切です」という言葉に深く思いを巡らせた。亡くなっても女史の言葉はずっと私の心を照らしている。→2019/05/01
keint
6
著者の自伝および学報の記事をまとめたものである。読もうと思ったきっかけは昭和維新関係(著者が渡辺錠太郎の娘)だったが、父親の死を乗り越えて、厳しく激しい生涯を生き抜いたタフな人だと感じた。一方で信仰を強く持っていても精神を病むこともあるのだなと思い、人生の穴を「何のために」と考えてみることが大切という著者の言葉にはハッとさせられた。2019/12/30
mi
1
何度も涙が出そうになり、感動した。2021/06/09
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