文春文庫<br> 逆転の大中国史―ユーラシアの視点から

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文春文庫
逆転の大中国史―ユーラシアの視点から

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  • サイズ 文庫判/ページ数 360p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784167912529
  • NDC分類 222.01
  • Cコード C0195

出版社内容情報

中華人民共和国「内モンゴル」で生まれ、北京で文化人類学を学んだ著者は、「漢民族」が世界の中心だという中華文明の価値観に、次第に違和感を覚える。日本に留学、梅棹忠夫氏に師事。ユーラシア草原を調査するうち、従来の常識とは全く違う、価値観の逆転した中国史が形成される。それは「中国四千年の歴史」という漢民族中心の一気通巻的な歴史観からの逆転である。ユーラシア草原に勃興した様々な民族こそが「中国史」の主役であり、漢人はそのなかのひとつに過ぎない。従来、日本人は「遊牧民族たちは、豊かな中華を強奪する野蛮人である」と教えられてきた。しかし、現代の中国人がほ文明をひらいた漢民族の子孫であるというのは、実は幻想なのだ、と筆者は説く。

黄河に文明が花開いていたころ、北の草原にはまったく別個の独立した文明が存在した。北方の遊牧民と黄河の農耕民は対等の存在であり、漢人がシナを支配して「漢帝国」を称していた時代にすら、北方には別の国家が存在していた。漢人の国家が中国全土を支配していたことはなく、つねにいくつかの帝国が東ユーラシアに並立あるいは鼎立していた。その主役はスキタイ、匈奴、鮮卑、ウイグル、チベット、モンゴルといった周辺の遊牧民族である。我々が漢民族国家の代表、中国の代名詞と考える「唐」ですら、実は鮮卑の王朝である。いわゆる中華の文化が発展するのは、そうした周辺諸民族出身の王朝が世界に開かれた政策を取っていた時期であり、長城をめぐらし「壁の中に閉じこもる」のが習性の漢人によるものではないのだ。

現在の中国人は、こうした真実の歴史を覆い隠し、自分たち「漢民族」が世界の支配者であったという幻想にしがみつき、周辺民族を弾圧する。今の中国を解くキーワードは「コンプレックス」だ。正しい中国史を正視しない限り、中国は歴史に復讐されるだろう。

内容説明

「中華は漢民族の国」は幻想だ。大陸を縦横に駆け、開かれた文明を担ってきた遊牧民こそ、この地の歴史を作り上げてきた主役なのだ。南モンゴルに生まれた文化人類学者が、ユーラシアの草原の実地調査と、絶えざる批判精神で描き出したのは、日本人の中国観を逆転させる、諸民族が織り成す雄大な歴史絵巻。

目次

序章 中国の歴史を逆転してみる
第1章 「漢民族」とは何か
第2章 草原に文明は生まれた
第3章 「西のスキタイ、東の匈奴」とシナ道教
第4章 唐は「漢民族」の国家ではなかった
第5章 三つの帝国が鼎立した時代
第6章 最後のユーラシア帝国、清
終章 現在の中国は歴史に復讐される

著者等紹介

楊海英[ヨウカイエイ]
1964年、南モンゴルのオルドス高原生まれ。モンゴル名オーノス・チョクト、日本名は大野旭。北京第二外国語学院日本語学科を卒業後、日本に留学。別府大学、国立民族学博物館、総合研究大学院大学で文化人類学の研究を続ける。梅棹忠夫、松原正毅に師事し、ユーラシア草原を現地調査。2000年、日本に帰化。静岡大学人文社会科学部教授。専攻、文化人類学。博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

James Hayashi

26
モンゴル出身の文化人類学者、静岡大教授。(漢民族に属された)中国など100年足らずの歴史であり、漢民族をはずしたユーラシア大陸史とでも言った方が良いタイトル。彼ら遊牧民が残したものは多くなく、残された遺跡、引き継がれた文化や言い伝えなど言葉で探らないと歴史的に見るものは大きくない。しかし当時に漢民族が統括していた証拠も全くなく(万里の長城はその証拠)独自の文化と伝統で固有の世界を築いていたであろうと思われる。北京語はmandarinと英語で言われるが、満洲の言葉が元になっている。美しいチャイナドレスしかり2020/09/10

卯月

6
著者は内モンゴル出身、北京で学んだあと日本へ。“野蛮な異民族に対抗する、「漢民族」による中国四千年の文明、歴史”は幻想だと、ユーラシアを股にかける遊牧民の視点から解説。人々は入れ替わり続け、劉邦の頃の「漢人」と今の漢人(漢字を使う人々)は違う。言語的裏付け。隋唐は鮮卑系遊牧民の国家(だから外国人の阿倍仲麻呂が出世できたんだな! 李白もテュルク系との説がある)だが、後の王朝の史書編纂者が出自を隠していく。遊牧民の機動力で広範囲に分布する考古学的遺物とか物凄く面白いが、「文化大革命で壊された」記述が多い……。2019/03/19

hatohebi

5
「野蛮」な遊牧騎馬民族と中華文明の対立という従来の歴史の見方を逆転し、ユーラシア中央の遊牧文明こそ合議制や多文化尊重など優れた制度を持った歴史の中心だったとする。かつて網野善彦らが過去から現在まで連綿と続く「日本」という統一体について疑義を呈したが、同様に「中国」についても一国史観的な枠組みから解放されなければならない。逆にどのようなシステムが「中国」を統一体として認識させているのか考えるのも興味深い。『創られた伝統』やB・アンダーソンと読み合わせたい一冊。2019/10/20

紫砂茶壺

3
良著。中国の歴史を北方のモンゴル高原から見たらどうなるか、というテーマ。東方の島国から眺めるととかく過大に評価されがちな中国だが、実際のところは騎馬遊牧民にいいようにやられていながら、自分たちこそが世界の中心である、と妄想に耽っているのが関の山ということが分かる。遊牧民をルーツに持つ王朝は異文化に寛容だが、漢族ルーツの王朝は遊牧民を恐れて弾圧に次ぐ弾圧。ウイグル問題などで中国共産党の異常性が指摘されるが、これは何も中国共産党だけの問題だけでなく、宋・明から続く漢民族の先祖返りというだけ。2021/03/25

Akiro OUED

3
宋の時代、実はキタイ、タングートとの三国時代だった。宋だったのか。確かに、歴史地図で見ると、南宋の領土は他の中華王朝と比べて、極小さい。元明清ときて今は漢族の独裁国家だけど、次は遊牧民の番だね、中国大陸を支配するのは。だから、ウイグルやチベットの人たちをいじめるんだね。2021/03/08

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