出版社内容情報
二十代の療養生活に始めた俳句。その明澄な世界は藤沢文学の源泉であり続けた。記者時代に俳句雑誌に投稿された句などを新たに追加。
内容説明
青年期に結核治療のため入院した病院で、藤沢周平は俳句と出会う。俳誌「海坂」に二年にわたり投句を続け、俳句への強い関心は後に小説『一茶』に結実した。文庫版には業界紙記者時代、また作家として充実していた昭和五十年代前半の作と思われる百余りの句を収録。藤沢の俳句への思いに光を当てる貴重な発見である。
目次
「海坂」より
「のびどめ」より
拾遺
「馬酔木」より
「俳句手帳」より
随筆九篇
著者等紹介
藤沢周平[フジサワシュウヘイ]
昭和2(1927)年、山形県鶴岡市に生れる。山形師範学校卒。48年「暗殺の年輪」で第69回直木賞を受賞。主要な作品として「白き瓶―小説 長塚節」(吉川英治文学賞)など多数。平成元年、菊池寛賞受賞、6年に朝日賞、同年東京都文化賞受賞。7年、紫綬褒章受章。9年1月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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モトラッド
38
★★★★☆全集を読み尽くし、ほかに読むものはないか、と思っていた時に、父の書架で見つけた一冊(単行本、1999年、3月30日第一刷)。『「海坂」、節のことなど』という興味深い一文をイントロにして、氏の詠んだ俳句111句が掲載されている。内訳は、俳誌「海坂」より54句、「のびどめより50句、拾遺7句。加えて、随筆が九篇収録されており、これが各々絶品で、心地よい余韻を残す。藤沢文学がお好きな方なら、氏の俳句への造詣の深さに触れるのも、興味深い事と思われる。2022/09/14
オールド・ボリシェビク
1
藤沢周平は全集を持っているほど好きな作家なのだが、これは全集完結後に刊行された。未発表句もあって、貴重な一冊だ。根っからの農民であることがわかる句が多い。2017/09/12
スズキィイ
0
20代後半に発症した肺結核の治療中に句作を開始した藤沢周平の百余りの句が収録されていて、中には単行本刊行の後に発見された俳句も文庫版には付されている。特に同じようで異なる句が複数あると、一つのモチーフを丁寧に俳句にしていく過程が作品を通じてわかるので読者としては大変興味深い。2024/05/30