出版社内容情報
Kは小噺のK、簡潔のK、奇態のK。つまりKなる体の掌編。これすなわち“K体掌説”と呼ぶ。刊行当時話題を呼んだ驚異の短編集。
内容説明
Kは小噺のK。Kは簡潔のK。Kは奇態のK。つまりKなる体の掌編。これ即ち、“K体掌説”なり。21世紀の稲垣足穂か、はたまた星新一か。ショートショートに驚異の新人現る…。単行本刊行当時、一体この著者は何者?と評判となった話題作がついに文庫化。その謎めいた著者の正体がいま明かされる。
目次
Kの一 一杯の酒を飲みながら月を待つというはかなり贅沢な遊戯なのではないかという物語。
落ちる首
月を見る猿
新体字
宵待月
月遊戯
月盗人
桜霊譚
最終バス
台詞〔ほか〕
著者等紹介
九星鳴[イチジクセイメイ]
夢枕獏。昭和26(1951)年、神奈川県小田原市生れ。48年、東海大学日本文学科卒業。52年「奇想天外」誌に「カエルの死」を書いてデビュー。『上弦の月を喰べる獅子』で、平成元年に第10回日本SF大賞を受賞。『神々の山嶺』で、10年に第11回柴田錬三郎賞を受賞。『大江戸釣客伝』で、23年に第39回泉鏡花文学賞、第5回舟橋聖一文学賞、翌年に第46回吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えみ
70
なんと!そういうことであったか!!九星鳴…おそるべし。まさか正体があの有名なお方だったとは。たまたま手に取り、パラリとページを捲ってみたら何とも独特な毒とユーモアを感じて購入。じっくり読んでみて知らされた事実にびっくり。やはり類稀なる言葉のセンスはいくら正体を隠しても、隠し切れない。誘蛾灯に誘引されるが如く…情報なくても寄っていってしまう私。ショートショートで纏められた一冊は、自由と謎めいた怪しが溢れている異質な作品集。思いつきと思いきりが素敵だ。まったく柵のない執筆は短くてもザラリとした印象を心に残す!2022/12/26
はじめさん
19
天狗星の如く文壇に現れた、驚異の大型新人・九星鳴(いちじく・せいめい)。星の名を冠し、星新一への挑戦か「ショートショート」で勝負! その正体は、新人料金で構わないから別名義で書かせろと吠えた、夢枕獏。格闘漫画だと、覆面レスラーの正体が実はアイツ…! というネタだわな。/ どこか川上弘美にも通じるような、不思議なオチのない話が多かった印象。私は作者の正体を帯なんかで知って読んだ口だが、文体とか正体隠す気ないだろおっさんとツッコミ。新人ならもちっと謙虚に50円くらい安くしてくれてもええんで?(H29/167)2017/07/06
Tomomi Yazaki
17
本書は、夢枕獏がその名を伏せて書いたものである。なにものにも縛られず、感性だけで思いのままに書き上げたからか、全く理解できない話もあるし、話にすらなっていないアイデアだけの言葉遊びもあり、まるで獏センセのおもちゃ箱。夢中で書きまくるセンセの姿が目に浮かびます。そして「私」という話で、誰もが経験しているであろう、寝ていてベッドから落ちる瞬間に、高いところから飛び降りる落下感覚が何故生じるのかという理由がわかりました。自由な発想って、凄いです!2022/04/21
Porco
16
再読。九星鳴は夢枕獏の別のペンネームである。それ自体は古今東西様々な作家がやっていることなので(貴方もか)と思う程度の話だ。読み始め一発目の小節のタイトルKの一「一杯の酒を飲みながら月を待つというのはかなり贅沢な遊戯なのではないかという物語。」が目に写り、そこからページを捲り【落ちる首】の「不思議な夢を見た。夜である。月が出ている。」という書き出しが出てくる。読む前に知ってるからこそ言える話かも知れないが、どう読んでもこの文章を出力できる人は夢枕獏以外にいるとは思えない。2024/08/04
冬見
13
好きだなあ。楽しくて、にまにましながら読んでいた。こういう作品、もっと出してくれないかな。穂村弘の『にょっ記』シリーズが好きな人はこれもはまると思う。Kは小噺のK。Kは簡潔のK。Kは奇態のK。Kなる体の掌編、"K体掌説"。2019/02/15