内容説明
13世紀、モンゴルは急速に力をつけ、中原の地に、若々しく荒々しい新鮮な血潮を輸血した。大元帝国の誕生。チンギス汗からフビライへと続くその大勢力は、世界征覇をめざして猪突の猛進をする。―波乱の歴史を、豊富な史料から考察し、祖国への愛と憧憬をこめて綴る中国5千年の歴史シリーズ。
目次
草原からの疾風(西への波紋;北遷と南遷;休戦への道;呉山第一峰;天地無情;チンギス汗起つ;滄海横流;チンギス汗からフビライへ;黄河千里;西湖のほとり;鄂州の興亡;〓山悲歌)
復興と明暗(正気の歌;元寇;色目人さまざま;断たれざるもの;四大家の元末;海と陸の反乱;王朝と末期;地上の天堂;朱元璋ここにあり;文人受難;大粛清の渦)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tai
11
チンギス汗の西征は中国の歴史を大きく超え、中国文明に触れる前にイスラム文化、キリスト教文化圏など幾つかの文明に触れた事で、中国文明心酔病を防ぐことになった。モンゴル人、色目人、南山と階級が分けられ文人の苦難が始まる。文天祥は登用を拒み獄中から正気の歌を詠む。後に藤田東湖、吉田松陰、広瀬武夫らがそれぞれの正気の歌となる。文人が国政から閉め出され高い理念はデカダンスへ。また多くの講釈が生まれる。明を興した朱元璋は、同じく農民出身、陽の劉邦とは対照的に隠の様相を呈す。子孫に継承させるべく文人、功臣を大粛清する。2025/08/03
Akihiro Nishio
10
遼、金、南宋の滅亡から、元の興隆と滅亡、明の成立と初代皇帝朱元璋の死まで。しかし、元は全く政治をしてない。いくら略奪と租税の区別がない遊牧民とはいえ、もう少し何とかならなかったのか。あと、元寇を防いだこともあるが、やたら日本が高く評価されているのが面白い。2016/04/16
鴨の入れ首
2
南宋滅亡から元末の戦乱、明朝成立と朱元璋の死まで。モンゴル民族中心の大元帝国の興亡が中心でした。あれほど強かったモンゴル帝国も中国大陸に入れば中華的に変貌するようで、中華的なものを否定すればするほど中華帝国化していくのは皮肉に思いました。そして混沌とした乱世に登場した怪人朱元璋の生涯は、良くも悪くも驚嘆すべきものでした。ややこしい時代を読みやすくまとめた陳さんの文章力と知識は、とにかく凄いなと思います。2025/04/30
smatsu
2
南宋の滅亡から元王朝の隆盛と衰退、明朝が興る所まで。モンゴルがこの時代に世界を制した理由は?南側の金とか西夏、宋などの国が軍事的に小粒な国だったことが一つの要因か。そこにタイミングよくスケールの大きい戦略を持つ指導者が出たということか。本書とは別に司馬遼太郎はこの時代のモンゴルが使う弓の性能が良かったみたいなことをどこかで書いていた気がする。陳舜臣はそういう文明的な面にはあまり興味がないようで、むしろ文化的な所にスポットを当ててくる。『西遊記』『水滸伝』『三国志演義』が書かれたのがこの時代なんですよね…2025/03/31
とめきち
1
金王朝のことは初めて知ることばかりで新鮮でしたが慣れない人物名にはかなり睡魔を誘発されました。元王朝末期の群雄割拠はヤクザ映画を観てるようで興奮を覚えました。朱元璋はやばい奴ですが庶民いじめはやらなそうなので現代に現れたらちょっと面白いかなと思います。2024/01/07