出版社内容情報
第一五三回芥川賞を受賞し、二〇一五年の話題をさらった「火花」が文庫化。受賞記念エッセイ「芥川龍之介への手紙」を併録。
又吉 直樹[マタヨシ ナオキ]
内容説明
売れない芸人の徳永は、天才肌の先輩芸人・神谷と出会い、師と仰ぐ。神谷の伝記を書くことを乞われ、共に過ごす時間が増えるが、やがて二人は別の道を歩むことになる。笑いとは何か、人間とは何かを描ききったデビュー小説。第153回芥川賞受賞作。芥川賞受賞記念エッセイ「芥川龍之介への手紙」を収録。
著者等紹介
又吉直樹[マタヨシナオキ]
1980年大阪府寝屋川市生まれ。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑い芸人。コンビ「ピース」として活動中。2015年「火花」で第153回芥川龍之介賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 6件/全6件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
そる
508
内容が芸人の話で軽妙だが文章は固く、心情の表現は迂遠で、太宰治みたい。言ってることは納得。大きな展開なく小さな地味な出来事が少しあって月日は10年以上経ち、夢を追い続けたいが現実も考え諦めなければいけないのはなんとも物悲しい。人に伝えたい事は、相手側の事、世の中の事を考えないと伝わらないし傷つく人がいる。なるほどな。ひとりよがりじゃいけないって事だ。「(略)でも僕達は世間を完全に無視することは出来ないんです。世間を無視することは、人に優しくないことなんです。それは、ほとんど面白くないことと同義なんです」2021/04/20
ehirano1
387
半自伝ではないかと思いますが、読み入ってしまいました。もし、神谷さんのモデルとなる方がホントにいらっしゃるのであれば、著者は最高の恩返しをしたのではないでしょうか。 因みに、記念エッセイは入れなくてイイですよ。せっかくの素晴らしい読後感が薄まります。読まなきゃ良いだろう、と言われるかもしれませんが、悲しいかな当方は隅々まで読んでしまう性格なのですよ・・・。2018/06/02
ぷう蔵
302
理解し尊敬しているが、それに近づこうとすると圧倒的な自分との素材の差に自分自身が押しつぶされそうになる。憧れているの、素敵だと思うのに同時に恨めしく思ってしまう。極端な事でなければこう言うことって日常的に自分にも起きている事であろう。しかし素材の差は個性なんだとか、適当に言い訳を作り、自分へのプレッシャーをスルリと受け流して平凡に生きているのだ。もう随分本音で人と会話をしたことがなかったことに気付かされた。心痛くてもお互いの本質を抉りながらぶつかり合う。傷ついてもいいじゃないか!このあほんだら!2017/03/06
mae.dat
292
お笑いには、比較的前のめりで笑わせて貰っています。個人的な技量が大きいのでしょうが、漫才のテンポで読む事が出来なくてね、そこが難しいのかなと。後ね、下ネタは嵌る事は有り得るとは思いますが、相当難しいと思うので、使わない方が無難だと思うんだよ。個人的なキャパシティの問題でも有りますが。特別収録と思われる『芥川龍之介への手紙』の方が、状況の想像が出来て笑えました。凡人儂は、神谷さんみたいな生き方は出来ないのですけど、芸人さんには一定数ある形なのでしょうか。成否に関わらず。時折聞きますよね、破天荒に思える逸話。2022/09/25
關 貞浩
278
ステージに立つということ。わたしたちの命が淘汰によって存在するということ。その淘汰の過程で関わるすべてが自分自身の輪郭を形成しているということ。先の見えない生活。報われない努力。取り残される焦燥や恐怖。商業的な成功と本質的な才能との間にあるギャップを自覚しながら、時間も金もすべてを漫才のために捧げ、どんな苦境でも面白さを追求し続ける姿は、なんと矛盾に満ちていることだろう。しかし同時に、何かに全力を注ぎ世間の批評と対峙することではじめて命のスパークする瞬間を味わうことができるという逆説が切実に描かれている。2018/12/02