出版社内容情報
藤沢作品で不動の一位、苛烈な運命に翻弄されながら成長する少年藩士の姿を描いた傑作が、新たなカバー・文字の大きな新装版で登場。海坂藩普請組牧家の跡取り・文四郎、15歳の初夏から物語は始まる。
隣家のふくとの淡い恋、小和田逸平・島崎与之助らとの友情、突然一家を襲う悲運と忍苦――。
苛烈な運命に翻弄されつつ成長してゆく少年藩士の姿を描き、数多くある藤沢作品のなかで不動の人気ナンバー1を誇る「?しぐれ」が、文字の大きくなった新装版で登場。
時代を越えて読み継がれる、藤沢文学の金字塔。
解説・湯川豊(文芸評論家)
藤沢 周平[フジサワ シュウヘイ]
内容説明
不遇感を抱えながら、一心に剣の稽古にはげむ文四郎。18歳の秋、神社の奉納試合でついに興津新之丞を破り、思いがけない人物より秘剣を伝授される。前途に光が射しはじめるなか、妻をめとり城勤めに精をだす日々。そこへ江戸にいるお福さまの消息が届く―。時代を越えて読み継がれる、藤沢文学の金字塔。
著者等紹介
藤沢周平[フジサワシュウヘイ]
昭和2(1927)年、山形県鶴岡市に生れる。山形師範学校卒。48年「暗殺の年輪」で第69回直木賞を受賞。「白き瓶―小説 長塚節」は、吉川英治文学賞。平成元年、菊池寛賞受賞、6年に朝日賞、同年東京都文化賞受賞。7年、紫綬褒章受章。9年1月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
175
上下巻、600P弱一気読みしました。本作は、渋い時代青春恋愛小説と言った感じです。読了感も良いですね。やはり藤沢周平は、葉室鱗にかなり影響を与えているのではないでしょうか?これからも機会をみつけて藤沢周平作品を読みたいと思います。2017/02/20
びす男
112
主人公の恋と友情、剣は、藩を巻き込む陰謀のなかでおおきく翻弄される。そんな政治を背景に、後悔だらけの若者の青春を、爽やかに描ききった。やっぱり、父親の亡骸を車にのせ、幼馴染みと一緒に運ぶシーンが切なくて印象的。真夏、汗まみれになりながら。作中の蝉しぐれはいつも、やりきれない主人公の悲しみを、彼にかわって大声で嘆いているように響く。夏の蝉に、青春の悲しみを託したタイトルなのだろうと感じた。読者が抱く後悔も一緒に、嘆いてくれる小説のようだった。2017/01/30
kinkin
102
文四郎、世之介、逸平三人の若者たちが成長していく中で様々な出来事や試練、死別などを通して描かれた青春グラフ亭。藤沢周平氏の最高傑作だと感じた。いつもは市井ものに傾きがちだが、この本のおかげで武家物の面白さを感じ取れるようになったと思う。海坂藩という架空の藩は実在するかのような印象。いつかもう一度読んでみたい 。2023/02/18
じいじ
102
やっぱり、藤沢作品ではこれが目茶苦茶に好きです。最後の別れを交わす、仕舞いの【蝉しぐれ】の章はもう一度読み返した。好き同士なのに夫婦になれなかった運命の二人、この願いは来世で添い遂げて欲しい…。本筋の派内が二派に割れての跡目争いが、見どころで面白い。家老一派の悪辣な策略を、主人公・若侍文四郎が沈着冷静、勇猛果敢な働きで未然に凌いで、気分爽快にさせてくれます。間違いなく再再読するだろう、藤沢さんの傑作時代小説です。 2021/07/19
モトラッド@積読本消化中
68
★★★★★[改装版にて再読]私事ですが、2019.9/6-7での鶴岡旅行を記念して、上巻を旅行中に携行。帰宅後、下巻を読了。上巻のレビューと重複しますが、藤沢先生の故郷→鶴岡(海坂藩城下)を体感しつつ、それとオーバーラップさせるように先生の文庫本を読書する、という稀有の体験となりました。33-34頁の興津新之丞との対決、藩主の叔父=加治織部正の存在、里村家老の策略、そして“秘剣”のゆくえ、成長した牧文四郎とお福さまは…。藤沢先生ファンは必見です。更に、あまねくお薦め致します。2019/09/18