出版社内容情報
藩医の娘だったあや子、後の只野真葛。離婚、家の没落などを経て自由で個性的な随筆を書くに至った生涯を生き生きと描いた歴史長篇。江戸時代にも清少納言がいた!
藩医の娘だったあや子、後の只野真葛。離婚、家の没落などを経て自由で個性的な随筆を書くに至った生涯を生き生きと描いた歴史長篇。
永井 路子[ナガイ ミチコ]
内容説明
『赤蝦夷風説考』を上申した伊達藩藩医・工藤平助を父に持つあや子。最初の結婚は失敗し、その後、家の没落などの苦難を乗り越え、二度目の夫のもとで「書く」喜びに出会い、只野真葛を名乗る。封建社会の中、誰にも束縛されない自由闊達な文章、社会批判で滝沢馬琴も驚かせたその半生を生き生きと描いた歴史長篇。
著者等紹介
永井路子[ナガイミチコ]
大正14(1925)年、東京に生れる。東京女子大学国語専攻部卒業。小学館勤務を経て文筆業に入る。昭和40年、「炎環」で第52回直木賞受賞。57年、「氷輪」で女流文学賞受賞。59年、第32回菊池寛賞受賞。63年、「雲と風と」で吉川英治文学賞受賞。平成21年、「岩倉具視」で毎日芸術賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Smileえっちゃん
57
江戸時代、伊達家の藩医工藤平助を父に持つあや子(只野真葛)の人生が書かれている。父平助と親しかった田沼意次の失脚と家の焼失、弟の死と家運が傾いていく。2度の結婚も年の離れた子持ちの後妻。2度目の夫の勧めで書くことを知り、生まれ変わった。この頃がいちばん幸せだったのかも。実家の没落という苦汁を飲んだからこ留めの深さがあったのでしょう。理屈に合わない封建的規制に対する思いを筆にぶつけることで解放された。こんな女性がいたことを初めて知り、永井さんの筆力にも引き込まれました。これを最後に小説の執筆は止められた。 2021/03/31
けいこ
14
田沼意次は賄賂政治で歴史の本に出てくるけれど、蝦夷地の事を調べさせたり、いろいろ先見の明を持っていた政治家だったみたいです。最近は、田沼意次が見直されているみたいで、評価が上がると良いですね。日本史にロシアが出てくるのは、この頃からなのでしょうか。それにしても、江戸時代の女性はいろいろな縛りがあって大変です。一度も顔をみたこともない男性のもとに嫁ぐことも当たり前だったとのこと。当時に比べると、現代の女性の立場は強くなって良かったです。2016/09/23
紅花
12
永井さんらしく、女性の鋭い視点から書かれている小説。前に読んだ小説が明治維新の新しい風が入った頃の小説で、これは江戸幕府の終わりの空気が淀んできた時代で、その時代の人々の生き様、考え方の違いも感じることが出来て面白かった。現代から見れば、真葛さんの人生は波瀾万丈だったけど、この時代、度重なる親類の死や江戸の町の大火、権力に巻き込まれた浮き沈み、個人より家を尊重されるのは当たり前だったんだと思う。そういう意味で、当時の人々の息吹や苦悩を感じられ、封建時代から脱した今、女性の生き方を改めて考えさせられた。2021/04/28
きょう
4
聡明で裕福なお育ち。映画「殿、利息でござる!」の重村さんが大殿の時代に伊達家に勤め、井伊家、酒井家と移動して~。あや子の人生と時代背景がよくわかりました。著作活動中は人生の中でも厳しく孤独なはずですが、高揚感が伝わります。表現することで満たされたからか~。真葛さんの著作を検索して、現代語訳で読んでみようと思っています。人物描写、特にルックスはどうなっているのかに注目したいです。2019/05/17
山内正
3
もっとお父様に似ればと鏡を見て頷くあや子 その黒子がねえと乳母が 藩医の父は用心や家老と来客が多い もてなしに二階に湯殿を拵え 進物が絶え間なく届く 人が多い おせんがもう早く有りません 女の盛りは一時ですと お嫁に行って不幸になりたく有りませんずっとお父様お母様の側で 孫は妹が産みますから この家は祖父母が気配り出来る人で 人の寄り集め家族だが上手く行った 唯一だけ部屋が暗いと大きな蝋燭二本灯して自分の目が老いたと気が付かずにな あや子は四角い字は読まなくてよい 女は不幸になる横で母が思案顔をする2021/04/01