出版社内容情報
偏屈で癇癪持ちの父。その怒り爆発の瞬間、日記に残した子どもへの情愛、臨終の一部始終を、次男坊の記憶でスケッチした名随筆。
没後100年。息子が記録した癇癪持ち大作家の素顔
偏屈で癇癪持ちの父。その怒り爆発の瞬間、日記に残した子どもへの情愛、臨終の一部始終を、次男坊の記憶でスケッチした名随筆。
内容説明
不機嫌な文豪の名作秘話、臨終の瞬間。次男坊が記す父の面影、名随筆20編。
目次
父夏目漱石
父の日記と子供達
面会日
父と中村是公さん
「文鳥」
一葉と漱石の原稿料
「草枕」の出来るまで
英語嫌いの漱石
父の手紙と森田さん
「道草」の頃
博士嫌いと夏目博士
父の書画
漱石の母とその里
「猫の墓」
父の家族と道楽の血
父の胃病と「則天去私」
父・臨終の前後
晴衣
母のこと
墓標の下
著者等紹介
夏目伸六[ナツメシンロク]
明治41(1908)年、夏目漱石の次男として東京に生まれる。暁星中学を経て慶應大学独文科中退。昭和12年応召、中国を転戦。15年に文藝春秋に入社。戦後まもなく退社し、随筆家となる。50年2月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
s-kozy
77
夏目漱石の次男による随筆。漱石は著者が9歳の時に亡くなっている。記憶の中の父、著者から推測される父、伝聞で知ることのできる父など文豪の様々な姿が描かれており、非常に興味深かった。臨終の際の漱石と家の様子も描写されており、息子ゆえの父への想いもそこはかとなく感じ取れる。また漱石の作品も読み返してみようかな。2017/11/08
佐島楓
66
漱石の次男が記した作品。父親に反発を感じながらも、心理分析や漱石の著作の分析では、まるで漱石本人に成り代わったような正確な評論をなさっており、血のつながりを感じさせる。資料的に貴重な内容なので、文庫での復刊はありがたい。2016/07/05
おさむ
48
2人のお孫さんに続き、息子さん(次男)の思い出本を読了。まさに明治の父親で、より漱石の実像に近づいた気になります。猫と漱石の墓にまつわるエピソードは初耳でした。とは言え、僅か9歳の時に先立たれてしまっているため、日記や門人らとの手紙などから亡き父親像を浮かび上がらせています。息子にとっては、数多の作品もまた父親を偲ぶ手がかりだったんでしょうね。長男の純一さんが海外で長らく遊学していたのに比べると、伸六さんの質素な生活ぶりを感じさせます。2016/11/07
yumiha
47
読み終えて、夏目漱石の人間としての潔癖さ、あるいは筋の通した人間性を思った。例えば、博士号を拒否したエピソードは有名だが、世間的な価値観に従って見せかけだけで取り繕う人間を決して認めなかったし、決して自分自身にも許さなかった。それは、漱石の次男伸六(著者)を模倣者と見抜き、をいをい、子ども相手にそこまでするんかい!と思う打擲をしたこと、悪い歯並びを隠さなかったのを「気にいった」から結婚した鏡子夫人などにもうかがうことができる。しかし、偉大過ぎる父を持ってしまった息子って、けっこう辛そうに思った。2020/11/21
saga
31
やはり息子にとって恐い親父だった。それでも著者の目を通して、妻・鏡子や出入りする弟子たちの様子が伝わってくる。伸六氏が文筆を生業にすれば、嫌でも漱石と比べられる必然を背負ってしまう。自分もそういう目で本書を読み、漱石の文章がいかに無駄をそぎ落として鋭いのかを再認識した。それでも、この著作が漱石を知るうえで重要なものであり、伸六氏の勇気を感じずにはいられない。2016/08/20