出版社内容情報
福島第一原発事故の調査をプロデュ―スした著者。さらなる取材を敢行、明らかになった驚愕の真実とは。第44回大宅賞受賞作。
内容説明
2011年3月15日。福島第一原発四号機の爆発後、米軍横須賀基地の放射線量が急激に上昇。米政府内では日本からの撤退を主張する海軍と、同盟の観点から踏みとどまることを主張する国務省が激しく対立する。日本政府内でも最悪シナリオの策定が始まった。人間の尊厳と叡智を懸けた戦いの全貌の詳細なリポート!
目次
トモダチ作戦
海軍vs国務省
ヨコスカ・ショック
ホソノ・プロセス
最悪のシナリオ
キリン登場
SPEEDIは動いているか
飯舘村異変
計画的避難区域
落城一日
神の御加護
著者等紹介
船橋洋一[フナバシヨウイチ]
1944年北京生まれ。東京大学教養学部卒業。68年に朝日新聞社に入社。北京支局、ワシントン支局、アメリカ総局長などを経て、2007年から10年まで主筆を務めた。86年に外交・国際報道でボーン・上田記念賞を受賞。主な著書に『通貨烈烈』(吉野作造賞)『同盟漂流』(新潮学芸賞)『カウントダウン・メルトダウン』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。朝日新聞退社後は「一般財団法人日本再建イニシアティブ」を設立、福島原発事故独立検証委員会(「民間事故調」)をプロデュースし、事故調査・検証報告書を刊行した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kokada_jnet
41
これは、かなり濃厚な読書体験だった。官直人のプラス面、マイナス面をわりと公平に描いているなと思って読んでいたが。まとめの最終章で、著者自身も、菅直人が原発事故時の首相だったことの、両面を書いていた。2021/04/15
James Hayashi
28
下巻は震災後のアメリカの対応から始まる。全体を通して殆どニュースや新聞の記事になっていなかったので新鮮であり驚き。米国は絶えず情報共有が不十分と感じ、東日本が核汚染荒廃地になる可能性ありと推測。原子力空母を持つ米国海軍は放射能に対しセンシティブであり、横須賀から多くの軍人が撤退したという。自衛隊の幹部も最悪の事態を想定しシナリオ作り。しかし統括するべき政府の対応には不満が残る。省庁の垣根を超えた指示系統の在り方を考慮して欲しい。2016/11/28
かんちゃん
27
政府事故調とは別に、自ら民間事故調を立ち上げた著者が数多の関係者にヒアリングして判明した生々しい記録の一端である。震災から5年、原発事故から5年。東日本大震災は地震と津波による多大な被害をもたらすと同時に、原発事故という国家危機をも招いていたことを忘れてはいけない。今なお多くの人々が慣れ親しんだ土地に帰られずにいる。東電や政府への安易な批判に終わらず、事故を深く省みる本書の真摯さは、あの日から5年を経た今、我々の襟を正させる迫力がある。2016/03/05
百太
22
イベント【東日本大震災・あの日を忘れない】参加中。 すごい量でで読了に時間かかりました。 ・・・なんなんだろう・・・この面子ばかりに重むきを置き右往左往するありかたって・・・。徒労感ばかり感じる・・・。 終章がなかったら、怒って眠れなくなりそうな本でした。 2016/03/15
まると
17
上下巻23章計1100ページを超えるこの膨大な記録は、解説で保阪正康さんが言うように「歴史に残る内容」だろうと思う。節目の年に読んで良かったと思える傑作でした。自衛隊ヘリによる「焼け石に水」の海水注入をテレビで見た時はもはやこんなことしかできないのかと絶望感に襲われた記憶があるが、空撮映像で4号機の水の残存が確認されるなど、これこそが反転攻勢のきっかけになる行動だったらしい。まさに「意志あるところに道は開かれる」なのだろう。危機のさなかには何が災いし何が幸いするのかわからないものだと感じ入るものがあった。2021/03/18