出版社内容情報
地唄の名人である盲目の父親と、アメリカに渡った娘との凄まじい愛情の確執、芸へのひたむきさを描いた著者初の記念的長編。
没後30年、ますます鮮やかな人間ドラマ!
地唄の名人である盲目の父親と、アメリカに渡った娘との凄まじい愛情の確執、芸へのひたむきさを描いた著者初の記念的長編。
内容説明
大検校菊沢寿久が守ってきた、深く寂しく強靱な生命力を底に流す地唄の世界。継承者として期待された娘の邦枝は、偉大な父に背いて日系二世の男と結婚、渡米する。古き伝統の闇と新旧世代の断絶、親子の確執を描くデビュー作「地唄」を収録した初の長編小説。若き有吉佐和子の圧倒的筆力と完成度の高さに酔う!
著者等紹介
有吉佐和子[アリヨシサワコ]
昭和6(1931)年、和歌山生まれ。昭和31年に『地唄』で文壇デビュー。世界初の全身麻酔手術を成功させた医者の嫁姑問題を描く『華岡青洲の妻』(女流文学賞)、老人介護問題に先鞭をつけ当時の流行語にもなった『恍惚の人』、公害問題を取り上げた『複合汚染』など意欲作を次々に発表し人気作家の地位を確固たるものにする。多彩かつ骨太、エンターテインメント性の高い傑作の数々を生み出した。昭和59年8月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nico🐬波待ち中
60
有吉佐和子さんのデビュー作。22〜24歳の若さで描かれたものとは驚いた。完成度がとても高い。"地唄"自体あまり聞き慣れない言葉で読み始めは戸惑ったけれど、女子大生・瑠璃子が菊沢寿久に弟子入りしてから俄然面白くなった。周囲を遮断する頑なな寿久の心をあっさりと溶かしてしまうとても魅力的な女性だった。ラストの寿久渾身の演奏は圧巻だった。年の瀬にいい作品に巡り合えて嬉しい。有吉作品は『悪女について』しか読んだことがなかったので、来年はもっと有吉作品を読んでみたい。2024/12/29
あじ
40
地唄を極めた大検校菊沢寿久。父であり師匠である寿久の反対を押し、日系二世との結婚に踏み切った邦枝。地唄の矜持を意固地に守る寿久に造反するように、邦枝は異国の地へと旅立っていく。父と娘の相容れない天秤の揺れと、双方を分かつ距離の臍を深遠に描きながら、登場させたのは執筆当時の著者と同じ年頃の大学生瑠璃子。飄々した彼女の新感覚が、盲の漆黒に光となって割り込む。そこへ同時に持ち上がる地唄の派閥問題。伝統継承に異端の介入などあるのか。父娘の結界と重ね、爪弾く調べは足の痺れをも意識に上らせぬ佳作であった。2018/10/16
いくら
34
最近有吉佐和子作品が続々と復刊され、嬉々としてその恩恵に浴しているわけですが、この『断弦』は最高でした。5編の連作で、そのうちの「地唄」が有吉佐和子のデビュー作というから、もう溜息しか出てこない。大検校として箏の世界に君臨する父、その後継者として目されながらも結婚により父と断絶する娘。そこに現れた女子大生の瑠璃子。簡潔なんだけど心の機微を実に丁寧に掬っているので、感動がストレートに伝わってくる。お勧め。2014/09/06
たぬ
29
☆4 地唄という言葉すら知らなかったし琴と箏の違いもここで初めて知ったほどに国産伝統音楽に疎い私でも楽しめた。登場人物の内面描写が細やかだからね。頑固一徹偏屈爺だけど実は歩み寄りたい大検校。現代っ子らしく嫌味のない距離感の女子大生弟子。伝統と格式を声高に主張しながら言うことは俗で下品な兄弟子たち。最後の録音シーンは沁みた。2021/12/25
ken_sakura
20
とても良かった\( ˆoˆ )/有吉佐和子が22-24歳の時に書いたデビュー作とのこと。始まりからこの品質なのかと呆然とする「才女」の腕前に楽しく酔った。あとがきの心がこもっていないしおらしさに苦笑、クソ野郎、と可笑しかった(ほめてます)解説とあとがきより、紆余で長編の第二章が短編として世に出たとのこと。短編、長編として共に高品質。時代は戦後10年程、昭和30年代。地唄の大家菊原寿久、娘菊原邦枝の芸の断絶と親子の確執の物語。最後は泣いた。泣かされた。解説を先に読んでいて最後を知っていたのに。2017/04/06
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